第53話

Officelove🦅
617
2020/04/06 01:19
入社して1年目。

1年も経ち、仕事にも慣れてきたものの、
ミスは減ることはなかった。

気付けばオフィスには一人それが毎日だった。

「はぁ…」

『どうしたの?』

いつもは仕事を早く終わらせて1番に帰る松村先輩が今日は残っていた。

「資料まとめるのが終わらなくて。松村先輩はどうしているんですか?」

『俺は今日一日中外で会議だったから、今寄ったの』

「そうなんですね。お疲れ様です」

しかし、10分経っても20分経っても松村先輩は帰ろうとしない。

「えっと…まだかかるので、帰っていただいても大丈夫ですよ」

『何言ってんの笑。女の子一人じゃ帰らせれないでしょ』

ふいにそういうことを言う。

ドキドキするってわかんないんだろうか。

「あ、ありがとうございます。すぐ終わらせます」

『ゆっくりでいいよ』

そう言ってコーヒーを淹れてくれた。

どこまで紳士的なんだろう。

「ふぅ…やっと終わった」

後ろを振り返ってみると、デスクにもたれかかって寝ている松村先輩。

その顔は、どこかのアイドルよりもかっこよく、素敵だった。

「……お疲れ様です…」

私はバレないように、頬に唇を落とした。

『ん……あ、終わった?』

「あ、お、終わりました。お待たせしました」

『よしじゃあ帰ろっか』



『あなたちゃんの家ってここらへんなんだね』

「はい」

『俺も近いから、毎日送ってくよ』

「え…」

次の日から、送り迎えを松村先輩にしてもらうことになった。

こんなに過保護にしていただいていいのか。



『あなたちゃんは彼氏とかいるの』

「私はいないです」

『じゃあ付き合っちゃう?』

「へ⁉」

『ふっ笑。冗談だよ。じゃあ頑張ろう。俺も今日は一日中パソコンだ』

朝からあんな事を言われて、頭が余計に回らない。

でも松村先輩に間に合うために、急いで仕事を終わらせる。

すると、松村先輩が持ってきてくれた資料と同時に、付箋が貼ってあった。

"ちょっと印刷室来て"

ドキドキした。

仕事を一目散に切りをつけて、印刷室へ向かった。

ガチャ

『あ、来た来た。笑』

「な、なんでしょうか」

ドアの窓から見れないように、私を床に押し付けた。

もちろん鍵もかかっている。

『あなたちゃん…もう我慢できなかった。こんなところで言うのもなんだけど…好き』

「えっと…」

『付き合って』



この日からだった。

私達のオフィスラブが始まったのは。
-fin-

プリ小説オーディオドラマ