よくある漫画みたいに、毎日アタックしてくる後輩が居まして。
『あなたせんぱぁい!!』
また来た。
朝イチだというのに元気が良すぎる。
「…お、おはよう…」
『元気ないんすか?なら俺が元気をあげます!
テクテクテクテク手首!』
「……」
『ぷっAHAHAHAHA』
本当にうるさい人に絡まれたもんだなぁ。
『元気になりました??あ、先輩、今日一緒に帰ってもいいですか?』
「うん…別にいいよ」
『よっしゃ!』
帰り道、しれっと道路側を歩くジェシー君は、きっとモテるんだ。
「ジェシー君って意外とモテそうだよね」
『え…それ、褒めてます…?』
「うん。一応笑」
『一応ってなんすか!』
「私なんかよりもっと可愛い娘との方が幸せになれるよ?」
すると、急にジェシー君は立ち止まった。
『俺…あなた先輩の近くに居たら迷惑ですか…?』
「……え…」
『ha…ですよね。じゃあさようなら。気をつけてください』
小さな気遣いをしてから、そのまま小走りで帰っていった。
それから卒業するまで、ジェシー君は現れなかった。
5年後。
就職し、ジェシー君のことは忘れかけていた。
帰り道の電車、疲れが溜まっていたせいか、気づいたら寝てしまっていた。
目を覚ますと私の頭は誰かの肩に。
マズイと思ってすぐ謝った。
「す、すいません!」
『HAHA!大丈夫ですよ〜、あなた先輩』
その相手はまさかの、ジェシー君だった。
あの頃とは打って変わって、髪は大人っぽい赤で、ガタイも男らしく、顔つきもかっこよくなっていた。
びっくりしすぎて放心状態になっていると、
『あなた先輩、元気ないんすか?俺が元気をあげますよ!』
あの頃と変わらない笑顔で言ってきた。
『はっけよーい、のこっタンバリンダンス!』
「……」
『AHAHAHAHA』
照れて自分が先に笑うのも変わってない。
「…あのさ、なんで居なくなったの?」
『なに、やっぱり寂しかったんですか?笑』
「い、いや、違うけど…」
『ごめんなさいごめんなさい笑。
僕、家の事情で転校したんですよ。だからあの日、先輩に想いを伝えようとしてたんですけど…』
「そうだったの?!ご、ごめんね…」
『あなた先輩は悪くないです!』
『あの、この後一杯どうですか?』
「ふふ。笑いいよ」
『よっしゃ!!』
そのまた2年後
お揃いの指輪つけて、神様の前に立っている。
『あなた?元気?最初はグー✊じやーん✋✋』
「ちょっと!うるさいよ!」
『HAHAHA』
いつでも笑顔で笑わせてくれる君に惹かれたんだ。
-fin-
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!