冬の真夜中、
2人で歩いた海辺。
『なんか夜の海って怖いよね』
俺と距離を縮めながら言う彼女はとても可愛かった。
「そう?俺はロマンチックだと思うけどな」
『ジェス君は毎日ロマンチストじゃん』
そう言っておきながら彼女は頑張って僕より1メートルくらい前に出て歩こうとする。
年上だからって無理するところも、止めなくちゃいけないけど可愛くてできない。
「あなたがいるからだよ」
彼女が照れるときは顎を隠す。
冬にしか見れないけど、夏は顔を真っ赤にした彼女が見れる。
彼女は夏のせいだって言ってるから、より夏が愛おしくなる。
冬の仕草も結構好きなんだけどね。
『高校のとき、JAWS見てから夜の海怖いの』
「あぁ、最初のところ?」
『そう』
「あれ、あの男がいけないよなぁ」
『だね笑。でもジェス君はあんな男とは違うもんね?』
また彼女は年上張りをした。
頼ってくれるのはすごく嬉しい。
それに、素直じゃない言い方も、むしろ僕の心に刺さる。
けど、今なら自信を持って言える。
「もちろん。夜の海だけじゃなくて、ずっとあなたを守らせてよ」
永遠を誓ったのは、怖くて寒く、彼女の顔の赤さが目立った日だった。
-fin-
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。