第50話

このカンケイを永遠に🦁
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2020/04/02 12:31
高校の頃

たまたま委員会が同じで、片付けをしてたときに、

『それ思いから持つよ』

「あ、ありがと」

『なぁお前って彼氏とかいねぇの』

「いないよ。好きな人は居るけどね」

『ふーん。どんな人』

実は樹の事が好きなんて、言えない。

あなたモテすぎるんだから。

「すごいモテてね、優しいし面白いし、…気遣いとかしてくれるの」

『……じゃあ俺には勝ち目ないな』

「…え…?」

『いや、なんでもない。もう暗くなるから帰れよ』

その思わせぶりな感じ、さすがなと思っていた余裕は無かった。

世間のこの御時世で学校が休校となってしまった。

樹の連絡先を聞こうと思っていたけど、聞きそびれてしまった。

それから卒業式のときに会えると思ったが、彼は、来ていなかった。

大学も離れてしまい、この恋は諦めようと思った。

やがて、樹と競うほど優しい彼氏と一つになり、結婚もした。

しばらく夫が単身赴任するという。

子供を作るのは長引くかな。

そんなことを考える私はどれだけ欲しがっているんだ。

そう。"足りてない"。

だから、寂しさと遊心で夜の街に足を踏み入れた。

立派な大人なのになにしてんだと冷静に誰か突っ込んで。

いつもより大人な格好をして、メイクも大人っぽく、薬指の指輪は引き出しに隠して。

すると案の定、肩を叩かれた。

振り向くとそこには、高校生の頃の優しくやんちゃな顔が目の前にいた。

唯一変わってるのは、髪色と身長、あと、派手な色が顔や耳に増えている。

「…えっ…と…」

『お前、可愛いな』

え、忘れられてる?

まぁ、昔のことだし、こんな格好なんだからわかんないよね。

「そ、そんなことないです」

私のこと覚えていないなら、いっその事あざとくしてみようと思った。

『いいから、おいで』

手を引っ張られたところは、もちろんホテル。



『いくよ?』

その瞬間私はだんだん蘇ってきた。

樹の事がすごく大好きだったこと、

樹とこんなことをしてみたかったこと。

「じゅ、り……」

気付けば名前を呼んでいた。

すると急に動きが止まった。

でも、こちらを見なかった。

そのまま行為は終わった。

しかし、

『……ごめん…』

「…え…?」

『俺のこと…覚えてるよね…』

「…うん」

『さっき、名前呼んでたしね。笑』

その笑顔、いけないことをしている私をもっと狂わす。

『あなた…変わったね』

「今日だけだよ」

しばらくの沈黙が流れたから、樹はきっとわかったんだろう。

『あなた。俺、ずっとあなたのこと好きだったよ。今でもずっと。けど、あなたは好きな人が居たんでしょ』

「何言ってんの」

『え?』

「私の好きな人は、樹だよ。けど、卒業式の日来なかったでしょ?」

『あ、あれは体調不良で…!』

「うん笑。別に今日会えたから良いけど」

『もう……会えない?』

「うん…」

『そっか』

「樹、私のこと好きで居てくれるんでしょ?」

『もちろん』

「私も樹がやっぱり好き。さっき気づいた」

『嬉し…でも、あなた、無理でしょ?』

「そう。だから、カラダだけ」

『ふっ笑。賛成』

この関係は、いつまで続くんだろう。

1番大好きだったはずの人と、

このカンケイを、永遠に。

-fin-

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