貴方はいつも置き手紙をする。
貴方が夜遅く帰ってきて、朝早く出かけたとしても、
"ご飯美味しかったよ!ありがとう"
そう、芸術家のような字で書いてある置き手紙を楽しみに、貴方のご飯を作っていた。
私が夜遅くなって帰っても、
"おふる"
ひらがなも書けない幼稚園児のような置き手紙が置いてあった。
『あなた帰ってたんだ!おかえり。お疲れ様!』
「ただいま!ありがとう。あのね、大我」
『なになに?』
「"ろ"は、こうやって書くんだよ。笑」
『ん?…あ!気づかなかった!めっちゃ恥ずい!笑』
置き手紙から始まる私達の会話は、幸せ以外の何者でもなかった。
今日も仕事が遅くなり、貴方の置き手紙を楽しみに早足で家に帰った。
案の定、テーブルの上に置き手紙が置いてあった。
"あなたごめん。もう会わない。"
この間とは打って変わって字が随分大人っぽくなっていた。
これで、貴方の置き手紙は最後だった。
毎晩帰る度、居るはずのない貴方の置き手紙を楽しみにしていた。
そういえば、最後の置き手紙の日のテーブルには、大我らしくない花がおいてあった。
確か、ベコナシって言う名前だったかな。
-fin-
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。