第84話

置き手紙🦇
514
2020/05/08 15:52
貴方はいつも置き手紙をする。

貴方が夜遅く帰ってきて、朝早く出かけたとしても、

"ご飯美味しかったよ!ありがとう"

そう、芸術家のような字で書いてある置き手紙を楽しみに、貴方のご飯を作っていた。

私が夜遅くなって帰っても、

"おふる"

ひらがなも書けない幼稚園児のような置き手紙が置いてあった。

『あなた帰ってたんだ!おかえり。お疲れ様!』

「ただいま!ありがとう。あのね、大我」

『なになに?』

「"ろ"は、こうやって書くんだよ。笑」

『ん?…あ!気づかなかった!めっちゃ恥ずい!笑』

置き手紙から始まる私達の会話は、幸せ以外の何者でもなかった。

今日も仕事が遅くなり、貴方の置き手紙を楽しみに早足で家に帰った。

案の定、テーブルの上に置き手紙が置いてあった。

"あなたごめん。もう会わない。"

この間とは打って変わって字が随分大人っぽくなっていた。

これで、貴方の置き手紙は最後だった。

毎晩帰る度、居るはずのない貴方の置き手紙を楽しみにしていた。

そういえば、最後の置き手紙の日のテーブルには、大我らしくない花がおいてあった。

確か、ベコナシって言う名前だったかな。

-fin-

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