第2話

音楽室の彼女🦅
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2020/03/04 00:14
ある春のこと
放課後の音楽室から美しい音色が聴こえる。
それは俺の最初で最後の恋だった。

北斗side

一人でり登校し、一人で下校する。
友達なんて一人もない。
唯一の楽しみは
本と音楽だった。

ある日、日直の用事で音楽室に荷物を取りに行こうと、人差し指でドアを叩こうとした時。
部屋の中からとても綺麗で美しいピアノの音が聴こえてきた。
俺は手をおろし、そのまま聴いていることにした。

やがて音楽が終わり、俺はまたドアに人差し指の関節を向けた。
そして3回打ち付けた。
中から返事をする声は、
ピアノと同じ
透き通るような美しい声だった。

俺が中に入ると、ピアノに手を掛けこちらを丸い目で見てくるのは、どこかで見たことあるようなないような、とても美しい女性だった。
この学校にはいた記憶がない。
よく見てみると、袖にはうちの学校の刺繍がしてあった。

「ピアノお上手ですね」
と俺が言うと、
少し切なそうにに
ありがとう
と言った。
なぜ切なそうにしていたかは、聞かないことにした。

荷物を持ち、帰る前、
「これから放課後来てもいいですか」
すると彼女は、さっきよりも切なそうに
コクりと頷いた。
彼女の名前は

というらしい。
その後、俺が帰ろうとしたとき、満面の笑みで
またね
って言ってくれた。

そして毎日、綺麗な音色を聴かせてくれた。
音楽室は、
夕日の光で暖かく、
時が止まったような空間だった。

放課後音楽室に行くようになってから、一週間が経とうとしていたとき
俺は聞いたんだ。

「奏さんは、彼氏とかっているんですか?」

すると
しばらく沈黙が流れた。

「ご、ごめんなさい
 変なこと聞いちゃって」

『いるよ』

「…え…」

『でも死んだの』
『自殺したの』
『……音楽室の窓から……』

「そうだったんですか」
そこからまた沈黙があった。
「 奏さんはまだその人のこと好きなんですか?」

『…好きだよ』

「そうなんですか…」

窓から入る光が
奏さんの目から堕ちる滴が光に反射して綺麗なんて言えないよな。

次の日も音楽室に行った。
けどそこには奏さんの姿はなかった。
 
次の日も、その次の日も。

俺はもう辛かった
友達もいないし
親もいない

奏さんともう会えないのなら
命の意味はないと思った。

俺は、
音楽室の窓から飛び降りた。
彼女の音色を思い出しながら。



それが最後。
これで僕の最初で最後の恋は終わった。

‐fin‐

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