第42話

守れない約束🦁
612
2020/03/25 14:36
俺のことは絶対に好きになるなよ。

好きになられたら縁切るから。

樹くんごめんね。

その約束、1日も守れなかった。

また彼がドアを開けて入ってきた。

もう随分肌寒いというのに、また同じ白の
Tシャツと、デニムを履いている。

それに、腕と耳と指には輝くゴールド。

あ、今日は黒いキャップも乗っている。

かわいらしい。

『腹減った〜』

まるでこの家の住民のようにソファにもたれかかっている。

いっそのこと住民になってくれたら嬉しいけど。

『あなた作るの大変だからどっか食べに行っちゃう?』

ほら、こういうところがずるいんだよ。

助手席から見る彼の顔は、言葉では表せないくらいかっこよかった。

『そんなに見んなよ』

黄色がかった歯は、煙草を吸っているのだとすぐわかる。

けど、吸っているところを一度も見たことがない。

『あー。だってあなたの体に悪いじゃん。あなたの前だけでは、吸ってない。笑』

その言い方やめてよ。

勘違いしちゃうでしょ。

これだからやめられないの。

約束は守れない。

けどそのこと伝えたら彼に会えなくなってしまうから。

『ねえあなた、俺のこと好きになってねえよな?』

もちろん。

だって好きになったら、縁切るもんね。

−fin−

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