そろそろ気づいてほしいな。
俺がお前のこと好きってこと。
ちっちゃい頃からずっと一緒だったけど、
別に友達ってわけでもなく、
どちらかと言うと俺がストーカーみたいな形なのかもしれない。
お前がピアノ教室に入ってたの知らなくて、俺が3ヶ月後にピアノ教室に入ったときや、
クラス同じになったとき、全然学級委員が決まらなくて唯一女子はお前が手を挙げたけど、
男子は決まらなくて、じゃんけんで負けて俺がなったり。
まぁ言い方を変えれば綺麗事で"運命"って言うかもしれないけど、お前はそう言うふうに思ってないだろうから。
中学ももちろん同じで、高校も同じだった。
さすがにお前も気にしてるとは思うが、全然そんな素振りを見せないから、逆に俺が心配になってくる。
「なぁ、俺らなんか知らねぇけど一緒だよな」
『まあそうかもね』
やっぱり気にしてないみたいだった。
別にそう言う素っ気ないところを好きになってしまった俺なんだけれども。
だからと言って、俺はアピールしたいとは思わない。
お前が自由に恋愛して相手決めればいいと思っている。
俺なんかに大切な人の恋愛を指図するような筋合いはないだろう。
だから俺は今日までひっそり片思いを続けてきた。
さすがの俺たちも、大学は別れた。
そこから勉強し、憧れていた会社に入ることが出来た。
しかし、そこでまた俺の中のストーカーが働いたらしい。
お前はあの時よりも大人っぽく俺の前に現れた。
だが、ここでもお前は素っ気なかった。
まるで俺と初めて会ったみたいに。
そんな中、お前から渡された資料の中に、
"帰り、会社の前で待ってます"
俺にこんなドラマチックなことが起こるとは思ってなかった。
別にお前は真面目だから、仕事の話だろうけど。
「お待たせ」
『あの、覚えてる?』
「ああ、もちろん」
『あのさ、ずっと言ってなかったんだけどさ、ストーカーなんだよね』
やはりそう思われていたが、俺はそういう訳ではない。
「いや、俺はそういう訳じゃないよ」
『違う。君じゃなくて、私がストーカーなの』
今、前代未聞のことが起きている。
「えっと、どういうこと?」
『私達、ずっと一緒だったでしょ?』
「うん」
『あれ、偶然なんかじゃない。私が合わせたの』
「じゃあ、どうして」
『そんなの…』
「…ん?」
『そんなの、君が好きだからに決まってるじゃん』
「あのさ、あの時どうやって俺に合わせてたの?」
『あの時って?』
「同じ会社に入ったこととか」
『あーあれは、偶然だよ。だってあの会社に
入る前に諦めてたもん、北斗のこと。
だから、北斗がいたからびっくりしちゃっ
たよ。笑』
[ママーだっこー]
『は〜い』
[パパも!]
「わかったよ。笑」
この世界には、"運命"というのは存在するらしいです。
-fin-
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。