俺の彼女はいつも塩対応。
彼女より2つ年下なのはわかってるけど、さすがに男だと思ってもらいたい。
けど、あの日の彼女は違った。
まるで調味料を間違えたように、とても砂糖になっていた。
『しょーくん?』
「え」
『え、なに??』
「いや、なんでもない」
『ふーん。ねぇ、構って』
「え、えっと…い、いいよ!おいで」
神には、少し素っ気なくするのがいいと言われてたけど、さすがにこのチャンスは素っ気なくできるはずがない。
『んふふ』
あなたってこんな可愛かったっけ。
俺、何かした?
まるでもう会えないみたい。
「ねえ、あなた?」
『なに?』
「俺、男だよ?」
『…知ってる』
その瞬間、あなたはドキドキしたのか顔を背けた。
だが俺には、少し切なそうな顔のような気もした。
「…ベッド行こ…」
俺達はたくさん愛し合った。
けど、名前を呼ぶ度、果てる度に、彼女は気持ち良さそうに、苦しんでいた。
「…⁉あなた⁉なんで泣いてるの?ごめん強かった?」
『ううんっ。大丈夫。幸せだなって』
決して今まで彼女はそんなことを言わなかった。
それにそんな顔をするのも初めて。
俺は察した。
だからと言って彼女には察したことを伝えなかった。
もしここで言ったら、彼女の思い通りにならなくなる。
俺は最期だら、思う存分愛した。
明方、荷物をあさる音がした。
俺が眠りが浅いことを知っているから、俺が起きないようにと気をつけてまとめている。
最後の最後まで彼女は愛おしかった。
数分経ったあと、彼女は俺に近づいてきた。
『紫耀、ごめんね。紫耀にもう迷惑はかけたくないの。きっと貴方にはもっと良い人が居るはず。幸せになってね。私も幸せになってくる。また何処かで会えるなら、最初に会ったタピオカ屋さんに行こうね。
紫耀の笑顔、大好きだったよ』
彼女は、いつものほっぺではなく、唇にキスを落とした。
しばらく涙を流しながら目を閉じていると、ドアの閉まる音がした。
あなただけ思い通りになるなんて不平等だ。
そう思い、俺はベッドから出て、玄関のドアを開けた。
-fin-
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!