-気絶からは、もう覚めてある。
キリの独り言が聞こえて、ネヴェルは目を開けた。
果てしなき蒼の空間。通り抜ける風。
ヒトなら気持ちいいのだろうかと思いながらネヴェルは上昇気流に乗って動くキリに抱えられていた。
気がつけばエルカヌスが酷く小さく見える高さまで来ていた。
機械のネヴェルには酸素の薄さなど関係ない。キリにも、酸素の薄さなど関係ない。
そんなヒトからしたらデタラメな2人の、もっとデタラメな方-キリが前を指した。
その方を見ると、空中に漂う巨大な機械の城があった。
キリはそこへ前進する。
キリが扉を開けると、城内に風が入りすぎたのか中にあった灯が何個か消えてしまっていたが-キリはお構い無しに2人がここに来る目的となった人物の名を呼んだ。
ネヴェルはエクス・マキナに軽く一礼した。
キリはネヴェルが気絶から復帰していることに特に何も言わなかった。
機械とはいつの間にか再起動しているものだとキリは思っているらしい。
エクス・マキナはそれを見るや否やネヴェルに急接近し、ネヴェルの目を見た。
そしてそう、ぽつりと呟くとエクス・マキナの指先からタッチパネルが現れた。
それを慣れた手つきで操作していくうちにエクス・マキナの顔はどんどん焦りが出てきていた。
エクス・マキナは観測、解析結果を嘘偽りなく話した。
ネヴェルはそれを聞いてさぁっと血の気が引いていく感覚がした。
-何故。
当機には血の一滴もこの体に通っていないのに。
ああ、これがツェルが最後まで当機には教えてくれなかった唯一の感情-
全ての機械と【連結】し、全てをその目で見る機械の頂点-エクス・マキナは。
そっと異常稼働を続ける機体-ネヴェルに近付きそっと槍を構えた。
決闘を申し込まれた。
正直、勝算が見当たらない。
だけど-
双剣を持ちエクス・マキナを睨み付けた-…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。