第4話

ep.3
2,463
2022/01/26 17:41




あぁ、今日の夜はリュジンとお出かけするんだった。




リュジンは最近仲良くなって、同い歳だってわかってからめちゃくちゃ意気投合しちゃった人。




正直TWICE先輩が丁度よく現れてくれて助かった。




ミナ先輩、どこまで着いてくるかわからなかったし…なんて言うか、誘われるとすごく、断りづらい。




それに、最近ミナ先輩はやけに距離が近い。




お昼とか、メンバーと食べたらいいのにわざわざ私のところまで来て、この前なんか"差し入れ"とか言われて手作りのお弁当渡された時はさすがにびっくりした。




その時はちょうど何も持ってきてなかったし、ミナ先輩の作る料理は噂通り凄く美味しかった。




好きな人いるのかな。




考えても意味ないのに、自然とそんなことが頭の中でぐるぐると回るようになってしまって。



Ryujin
Ryujin
あなた!!やっと見つけた…
you
あ、いた。
Ryujin
Ryujin
反応薄。
you
いや、ごめん。ちょっと考え事してた。
Ryujin
Ryujin
あなたって考え事するんだ。
you
そりゃ人間ですからね。
Ryujin
Ryujin
ユナが"あなたがまだ会社残ってミナさんとダンス練習してた"って言ってたから、まだ帰ってないんかと思ってわざわざ来ちゃったじゃん。
you
心配性のリュジンちゃん、可愛いね。
Ryujin
Ryujin
別に心配してない。
とにかく、これからご飯直行するから。




そんなわけで、リュジンおすすめのお店に来たわけですが……



Ryujin
Ryujin
はい!!沢山食べて!!
you
えぇ…




目の前には二人分とは思えないほどの量の料理が。



Ryujin
Ryujin
あなたは痩せすぎ。肉食べて筋肉つけな。
you
あのさ…私の体見てから言ってくれますか。
Ryujin
Ryujin
見たらわかるよヒョロヒョロじゃん。
you
そうじゃなくて、服の下。
Ryujin
Ryujin
服の下…?ちょ、あなた!?




しょうがなく胸の下まで来ていたシャツを捲し上げた。



Ryujin
Ryujin
も、もうわかったから…っ!!
恥ずかしいからシャツ戻してばか…
you
これ以上筋肉つけたらボディビルダーなっちゃうよ。
Ryujin
Ryujin
…もう頼んじゃったじゃん。




リュジンが悲しそうな顔で料理を口に運んでいる。



you
全部食べるに決まってるでしょ。
Ryujin
Ryujin
え…あ、え?




目の前の肉をとんでもないペースで口にポイポイ放り込む。



口をポカンと開けて私を見てるリュジンの顔が面白すぎて危うく吹き出しそうになった。



you
何見てんの?食べないの?
Ryujin
Ryujin
いや…あんた何者なの……
you
人間ですが。
Ryujin
Ryujin
そうじゃなくて、




その時だった。



you
……ッ!?




いきなり息苦しくなって、フォークを反射的に落としてしまった。




なんだろう、喘息?



Ryujin
Ryujin
ほらー、一気に食べるからそうなるんだよ。
you
……はぁ、はぁ…ッ
Ryujin
Ryujin
…え?ちょ、大丈夫?
you
わか…んない……なん、か…息が……くる、しッ
Ryujin
Ryujin
ドッキリとかじゃないよね?
you
………




もはや声を出すこともできなかった。



まるで酸素が脳に行き届いてないみたいにクラクラするけど、私は必死に首を横に振る。



Ryujin
Ryujin
は?…ちょ、マジのやつ!?
救急車呼ぶから…
you
だめっ…きゅ、うきゅう…しゃは…
Ryujin
Ryujin
そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!
you
みんなにっ…めいわく、かける、から…
you
でびゅ、できっ…なく、なるの…やだ……




これで何か悪い病気だって診断されたら、デビューは取り消され、私の努力も水の泡となる。




それに、ここまで応援してくれたファンの皆や家族にも迷惑をかけることになる。




それだけは嫌だった。



Ryujin
Ryujin
わかった…わかったから……
じゃあ、どうしたらいい?




その時、私のスマホがぶるぶると震えた。




電話だ。




こんな時に、誰だよ。



you
りゅじ…ん…でんわっ…だれから…?
Ryujin
Ryujin
サナ先輩って書いてるよ…
you
でて、くれない…?
Ryujin
Ryujin
え、私が?
you
はやく……




そう言うとリュジンは電話に出てくれた。



Ryujin
Ryujin
もしもし…あなたじゃなくて申し訳ないです。今緊急事態で……
Ryujin
Ryujin
…え、ミナさんもですか?
Ryujin
Ryujin
実は…今あなたといるんですけど、あなたも急に喘息みたいになって話せる状態じゃないんです。




ミナ先輩?




ミナ先輩に何かあったのだろうか。




こんな時にまで他の人の心配ができるなんて、私は案外余裕なのかな。




いや、余裕なはずがない。




現時点で私の視界は真っ暗だ。




リュジンの声と店内の騒ぎしか聞こえない。



Ryujin
Ryujin
いや…救急車は呼ばないで欲しいって言われて……
Ryujin
Ryujin
そうですか…ミナさん、あなたと同じこと言ってますね。
Ryujin
Ryujin
あなた、少しは良くなった?
Ryujin
Ryujin
……あなた?




リュジンが私の名前を呼んだ時、私は既に意識を失っていた。



Ryujin
Ryujin
サナさん!!あなたが…反応しないのでッ、あの、えっと…救急車呼ぶので!!切ります…!!




こうして、私とミナ先輩は、同じタイミングで、同じ病院に運ばれた。






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