あぁ、今日の夜はリュジンとお出かけするんだった。
リュジンは最近仲良くなって、同い歳だってわかってからめちゃくちゃ意気投合しちゃった人。
正直TWICE先輩が丁度よく現れてくれて助かった。
ミナ先輩、どこまで着いてくるかわからなかったし…なんて言うか、誘われるとすごく、断りづらい。
それに、最近ミナ先輩はやけに距離が近い。
お昼とか、メンバーと食べたらいいのにわざわざ私のところまで来て、この前なんか"差し入れ"とか言われて手作りのお弁当渡された時はさすがにびっくりした。
その時はちょうど何も持ってきてなかったし、ミナ先輩の作る料理は噂通り凄く美味しかった。
好きな人いるのかな。
考えても意味ないのに、自然とそんなことが頭の中でぐるぐると回るようになってしまって。
そんなわけで、リュジンおすすめのお店に来たわけですが……
目の前には二人分とは思えないほどの量の料理が。
しょうがなく胸の下まで来ていたシャツを捲し上げた。
リュジンが悲しそうな顔で料理を口に運んでいる。
目の前の肉をとんでもないペースで口にポイポイ放り込む。
口をポカンと開けて私を見てるリュジンの顔が面白すぎて危うく吹き出しそうになった。
その時だった。
いきなり息苦しくなって、フォークを反射的に落としてしまった。
なんだろう、喘息?
もはや声を出すこともできなかった。
まるで酸素が脳に行き届いてないみたいにクラクラするけど、私は必死に首を横に振る。
これで何か悪い病気だって診断されたら、デビューは取り消され、私の努力も水の泡となる。
それに、ここまで応援してくれたファンの皆や家族にも迷惑をかけることになる。
それだけは嫌だった。
その時、私のスマホがぶるぶると震えた。
電話だ。
こんな時に、誰だよ。
そう言うとリュジンは電話に出てくれた。
ミナ先輩?
ミナ先輩に何かあったのだろうか。
こんな時にまで他の人の心配ができるなんて、私は案外余裕なのかな。
いや、余裕なはずがない。
現時点で私の視界は真っ暗だ。
リュジンの声と店内の騒ぎしか聞こえない。
リュジンが私の名前を呼んだ時、私は既に意識を失っていた。
こうして、私とミナ先輩は、同じタイミングで、同じ病院に運ばれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!