ミナは少しの間硬直し、頷いた。
口喧嘩は今日も絶好調。
私達はある一定距離以上離れると、その距離に応じた発作が起こる。
頭痛、倦怠感、熱、酷いものでは過呼吸とか、色々。
医師にも診てもらったが、特に心身に以上がある訳でもないらしい。
先天的なものだとか。
どっちが歳上でどっちが歳下なんだか。
ミナは私を睨みつけ、車を降りる。
別に私は彼女と血が繋がっているわけでもなければ、ボディガードでもない。
ただの練習生だ。
数ヶ月後にデビューするはずだった。
後輩グループとして、新たな一歩を踏み出すはずだった。
ある日、私とミナがPDに呼び出された。
こうして私はデビューを一時保留にされ、極力ミナの近くにいることを強いられた。
そのため移動はほぼ、TWICE先輩達と一緒。
ダンスレッスンもボイトレも、何もかも先輩達と一緒だ。
"何であなただけデビューできないのマジで意味わからん"
"あなたがいないデビュー曲とか聴きたくないわ"
"あなた病気かな…"
スマホからSNSアプリを開けばこんなのばっか。
自分の名前がトレンド入りする日が来るなんて。
しかもこんな暗い話題で。
会社の控え室でそんな数週間前のことを考えていると、サナさんが声を掛けてくれた。
サナさんは、本当に、めちゃくちゃ優しい。
私とミナの関係がいつかフッと消えて、サナさんに適応されたらな、とか思っちゃったりする。
そういうことも一応考えてるんだ。
意外。
いや、サナさん?
範囲5kmなんですけど。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。