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第12話

#12
蓮が口にしたその言葉が、私の耳の中で反芻された
『傷つくのは見たくない』
その一言が、何故か私の心の中につかえて、息苦しくさせていた
蓮は、私のSPをする前に、誰かが傷つくのを見た? そしてそれを見たから、SPになったの?
それなら誰を? 一体誰が、蓮をここまで執着させるようにしたのか……この自問の答えが、気になって仕方ない
成瀬 大和
ふぅん……君にも色々と事情があるようだね
先程とは打って変わり、苦虫を噛み潰したような、どことなく後ろめたさを感じる表情を浮かべ、大和先輩は静かに立ち上がった
嫌な記憶を思い出させてしまったかもしれない……そう考えたんだろう。そして、自分がここにいたら更に場を悪化させてしまうと察して、この部屋から去ろうとしている
大和先輩は、やっぱり優しい……優しくて、学業の成績という意味抜きで賢い。人の気持ちをすぐに汲み取ってしまうから、私が分からなかった蓮の気持ちも分かっちゃったんだな
成瀬 大和
それじゃあ、僕はここで失礼するよ。まだ澪ちゃんとは話し足りないけど致し方ない。また明日、二人とも
白樹 澪
は、はい。大和先輩、さよなら
瀬沢 蓮
…………
項垂れている蓮の横を通り過ぎ、颯爽と生徒会長室を後にする大和先輩を見送りながら、私は何一つ言葉を発さない彼に視線を移す
愕然としている……ううん、違う
愕然としているなんて全く違う。彼の目は寧ろ……強い決意を秘めた、輝きに満ちたもの
でも纏っている雰囲気は、悲しさと辛さと、やるせなさを湛えている。なんてちぐはぐなんだろう
でもそれは、それだけ彼の心に、埋められない穴が空いている証拠なのかもしれない
白樹 澪
……あのさ、蓮
瀬沢 蓮
……なんだよ
白樹 澪
蓮がさ、私のこと、大切に思ってくれてるのは分かったよ
瀬沢 蓮
……そうか
力ない返事をする彼に構わず、私は続ける
私の言葉だけで、救われないことは分かってる。だから変に、蓮が抱える内情を掘り返すんじゃなくて、私なりに説得できれば……そう思って
白樹 澪
私も、一人は怖いし、確かに蓮がいてくれた方が心強い。でも少なくとも、大和先輩は信用できるよ
瀬沢 蓮
……俺は、そんな意味で言ったんじゃない
白樹 澪
それ、さっきも言ってたけど……じゃあどんな意味なの?
瀬沢 蓮
だから、女の自覚を持てと言ってたんだよ
白樹 澪
お、女の自覚っ?!
予想外の予想外、まさかの意味だとわかり、私は羞恥と怒りで顔を真っ赤に染めた
思わず自分のお腹に両腕を回し自らを抱き締め、ソファの上でずりずり後ずさり
こ、こいつ……私が女子じゃないって言いたいわけ?! さ、さっきは『可愛い』とか言っておきながら?
ちょっと同情したし、結構辛い目に遭ったのかなぁと、蓮のことをおもんぱかって言ってやったのに……!
やっっっっっぱりどこまでも失礼なやつ!!
白樹 澪
私はちゃんと女子なんだけど?!
瀬沢 蓮
え、そりゃ生物学的には正真正銘の……
白樹 澪
ちょ、性格は女子じゃないって言いたいの?! ……まあ、否定は出来ないけど
瀬沢 蓮
言えるかはちょっと
白樹 澪
──────っぅ!!
そりゃ、結構なお転婆だっていう自覚はあるし、噂の『可憐姫』とはかけ離れてるだろうけど
でもでもっ、なんでそんな、私を冷ややかな目で見ながら言うの?!
本当に私の騎士なら、お世辞でもいいからちょっとは褒めてよ〜!!
白樹 澪
もう知らないっ!
瀬沢 蓮
あ、おい!
捨て台詞同然に吐き捨て、私はその場から駆け出した
逃げ足が自慢の私の俊敏さに、蓮は体どころか目すら反応しなかったようで、虚をつかれたように私を追いかけてくる
ほんっとうに知らないんだから! こんなやつがSPなんて、私は絶対に認めない!