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第2話

#2
白樹 澪
あんの過保護が……っ
SPを雇うと言われた日から一夜明け
恨みがましく吐き捨て、私は窓から差し込む朝日を浴びながら、腕を掲げてぐーっと伸びをした
一通り眠気を覚ましたところで、私はすぐに学校へと行く準備に取り掛かる
──私の家、白樹家は世界的に有名な大企業の創業家だ。特別老舗という訳では無いものの、いち早く"IT"を様々な場所で取り入れたり、中小企業のバックアップをしたりと……色々な面で進出を果たしてきた
そんな白樹家の直系に生まれた私につけられた肩書きは、もちろん"社長令嬢"
一般的に令嬢には、お淑やかで、言葉遣いが丁寧で頭が切れて美しくて……みたいな、まるで妖精のようなイメージがあると思う
けど、実際そんなことはない。完全な夢物語
だって……そのイメージをぶち壊す私がここにいるんだもんね
完全に体育会系で勉強は大の苦手。お転婆をそっくりそのまま表したような性格で、とてもじゃないけど、誰が見ても令嬢には見えないだろう
でも、誘拐などに関わる裏世界では、私の名前は元より、容姿や身体的特徴などなどの情報は流通している
今までも幾度となく誘拐されそうになったけど、その度に全力疾走で逃げたり、誰も登れないような高さの塀を伝って家まで帰ったり……とかしていたら、気づけば誘拐しに来るのは、力自慢の変質者ばかりになってしまった
私を人質に取れば、何億、何千万ものお金の移動が始まるだろう。それだけ、私は有名かつ、裏世界では格好の獲物なのだ
白樹 澪
それでもこの16年間、命の危険もなく気丈に生きてきたのよ……なのに今更SPなんて
女の子なのか男の子なのかすら知らされていない。片時も離れず過ごすわけだから、できれば女の子がいいな……女の子のSPっていうのも希少だけど
ぶつぶつと不安を呟きながら、室内にある洗面台で顔を洗い、一通り歯を磨き、制服へと袖を通す
私が通っている学校は、至って普通の私立高校。そこまで馬鹿高校……ってほどでもないけど、通っていることを驚かれるほど、勉強が優秀でもない
私が願って入学したの。お金持ちだらけの有名な学校に入るのは嫌だって。戦々恐々とした駆け引きが渦巻き、親の七光りで気取るような人たちのところには行きたくなかった
そっちの方が、楽しい高校生活を送れそう……そんなことも考えて
無事入学できたのはいいものの、その中で私は、この肩書きのせいで悪目立ちしてしまってる。毎日毎日視線が痛い
放課後、友達と一緒にどこかへ遊びに行ったり……と一人画策していた野望は早々に打ち砕かれた
高校一年の末、副生徒会長に推薦された時、どれだけ焦ったことか。生徒会なんて性に合わないし、何より目立つ!
私は、目立たず平穏に過ごしたいの。願わくば、高校生らしく遊び回ったり……そう、社長令嬢なんて肩書きをどこかへ置き去りにして
うんうんと一人で頷きながら、てきぱきと支度を整え、私は食事を摂るために自室を出て、階段を駆け下り階下へ向かう
広い食堂へ入ると、テーブルクロスの掛けられた横長のテーブルに、私一人分の朝食がぽつんと用意されていた
私の大好きな苺がたんまりとお皿に盛られているのに、あまり嬉しさを感じなかった
テーブル上の余白がやけに目立つ。何人、何十人もの人が同時に食卓についても余裕なのに、私一人しかいない
父さんも母さんも、毎日毎日家業に追われて忙しいし、この家に住むのは直系の人だけ。使用人の人とは、まるで兄妹姉妹のようによく話すけど、一緒に食事なんて許されるはずがないし
白樹 澪
SPの人が来てくれたら、一緒に食べてくれるかな……ううん、そんな訳、ないか
私の護衛をしてくれるのに、一緒に食べるなんてしないよね
正真正銘のバカだわ、私
でも……小さい頃ですら、食堂で両親と顔を合わせることは片手に収まるほどしか無かった
それどころか、一緒に遊ぶ暇も、どこかへ出かける機会もなくて……寂しかったような
白樹 澪
せめて、誰か話し相手がいればいいのに
ぽつりと呟いたささやかな願いは、叶うことはないと言いたげに、どこか遠くへと消え去った
──どうしてか、心の中にぽっかりと大きな穴が空いているような感覚がしたのは気のせいだろうか