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第3話

#3
一際、通学中の生徒たちの視線を引く、艶やかな黒塗りの高級車
それに乗っているのは紛うこと無く私である
お嬢様あるある。自家用車(高級車というおまけ付き)での送迎!
例に漏れず、過保護な父は私に専属の運転手さんを付け、学校の送迎だけでなく、プライベートな用事がある時もこの車
幼稚園の時からおよそ15年弱、毎日のように体験している私は、いよいよ窓越しに注がれる視線に慣れてきた
とはいえ設計上、車内から景色ははっきり見えるけど、外からは私の顔はおろか、性別すら分からないだろう。逆にそれが生徒たちの好奇心を掻き立てる
まあ、私がこの車で登校してくることは有名なんだけどね。そりゃ、毎日同じ車ならみんな覚えちゃうよ
車は校門前の道路脇に停まり、運転手さんがこちらを振り返った
清水さん
お嬢様、お着きになりました
白樹 澪
はーい。清水さん、いつもありがとう
清水さん
恐縮でございます
にこりと人の良さそうな笑みを浮かべる、60代前半と見受けられる運転手さん──清水さんは、いつも私の送迎を担当してくれる人
幼い頃からよくお世話になってきた。規律やスケジュールには厳しいが、時折羽目を外させてくれたりと、なんだかんだで優しい
清水さんは車から降り、私が乗っている後部座席の傍まで回ると、扉を開けてくれた
隣に置いていたバッグを掴み、車から降りると、清水さんは「行ってらっしゃいませ」と言う言葉と共に、恭しく一礼する
白樹 澪
行ってきますっ!
元気よく校門を潜ると、途端に集中攻撃のごとく四方八方から視線を感じた
知らない知らない。気づいてないふり
堂々と胸を張っていればいい。そうすれば、よく分からない人から話しかけられることもないし!
痛いほどグサグサと突き刺さってくる視線を一掃し、私は昇降口で靴を履き替え、自分のクラスへと足を運ぶ
教室までの道中、真っ白な清潔感のある内壁と、廊下に敷かれた焦げ茶のレンガ調に自然と目が行った
白を基調とした、モダンなデザインが施された学校、私立桜海おうみ高等学校
名前は洒落ているけど、至って普通の私立高校
生徒たちは皆、高校生らしく青春を謳歌している。そんな彼らのトップに立つ人は──
成瀬 大和
やあ、澪ちゃん。今日もご機嫌麗しゅう
白樹 澪
大和先輩、おはようございます!
向かい側から歩いてくるのは、人一倍輝かしいオーラを放つ男子生徒──否、現生徒会長、成瀬なるせ大和やまと先輩だ
その悠然とした佇まいは、優しげな雰囲気も相まって、彼の穏やかそうな人柄を際立たせていた
先輩とは、私が副生徒会長に推薦された折に初めて出会った。剣呑とした空気漂う選挙中、一人だけ飄々とした態度で演説に臨んでいたのが気になり、話しかけてみたの
以前から、成績優秀な先輩として有名だったらしいけど、私は全く知らず……ちょっと恥ずかしかったのと、申し訳なかった
誰彼関係なく優しい生徒会長。そして、その人気を高めているのが……
白樹 澪
……なんか、後ろにいますね
成瀬 大和
あはは。酷い言い様だね
白樹 澪
いつも通りの光景ではありますけど
大和先輩の後ろにいるのは、数えるだけで骨が折れそうな人数の女子生徒の皆様だ
誰も彼も黄色い悲鳴を上げ、両手で頬を包み込み悶えている
……まあつまり、格好よすぎて女子人気が異常なほど高い
日本人離れした顔立ちをしているのに加え、頭はいいし、リーダーシップもあるし、頼り甲斐もあると来た。生徒会長に就任したことで人気に火がつき、おまけに爆発したらしい
そのせいで、常に後ろには女子生徒がつきまとい、まるで某有名病院ドラマの院長回診のようなシーンが出来上がってしまっている
成瀬 大和
お陰で澪ちゃんと二人きりで話せないから寂しいよ。今度また、生徒会長室に来てくれ。ゆっくりと話そう
白樹 澪
はいっ、喜んで!
苦笑しながら、すれ違いざまに私の耳ともで囁き、手を振りながら去っていく大和先輩を見送りながら、私は嬉しさが込み上げる
大和先輩と話すのは楽しい。……家柄のせいで、ちょっと話しかけづらいと思われてるらしく、みんな私に近寄ってこない。だから友達らしい友達がいない
大和先輩は唯一の話し相手。今日も、生徒会長室にお邪魔しに行こうかなぁ
なーんて、のほほんと呑気に考えていた時
??
おい
ふと、背後から私を制するような声が聞こえた