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第8話

#8
私の目線の先には、数人の女の子たちが蓮を囲んでいる光景があった
誰も彼も皆、顔を紅色に染めて、なにか妄想の世界に旅立ったようなうっとりとした顔をしながら私を凝視している
きゃーっと、一際可愛らしい悲鳴をあげる彼女たちの意味がわからず、私は箸を構え、口を半開きになった変なポーズのまま固まった
瀬沢 蓮
可憐姫?
クラスメイト
あ、瀬沢くんは知らないよね。白樹さん、妖精みたいに可愛いから、『可憐姫』って呼ばれてるの。
それにほら、白樹さんってお嬢様でしょ。精練された所作のひとつひとつが、如何にもお姫様って感じで──
本人が傍にいるというのに、ぺらぺらと一人勝手に語り出すクラスメイト
え……何それ、初耳
夢を見ているところ悪いけど、私、全然可憐じゃないんだけど?
寧ろ真逆の存在! 可憐っていう言葉に一番遠い場所にいる人だよ? その上、『姫』ってどういうこと?!
全くをもって知らなかったあだ名の存在に、頭の中はぐるぐると円を描く。思考もままならない私に、あたかも悪者を見るような、ねっとりとした視線が蓮から注がれた
彼はそっと目を細め、そして、一言
瀬沢 蓮
……似合わねぇ
白樹 澪
よ、余計なお世話!
こいつ……っ、失礼にも程があるでしょ?!
デリカシーっていう概念が欠落してるんじゃないか、と疑ってしまう
父さんが紹介してきたから、どんな人なんだろうと気になってはいたけど……ちょっと、いや、かなり変人だ
もう……私の周りにいる常識者って、大和先輩だけなんじゃ?
先の見えない未来を考え一人懊悩していると、蓮はふと、言葉を続けた
瀬沢 蓮
まあ、小さい頃ならぴったりだったかもしれないけど
どこか懐かしむような感情の込められたような一言に、私の中の何かが反応する
あれ……私、蓮とは今日初めて会ったのに、なんでそんなこと言うんだろう?
私が忘れてるだけ? でも、今の台詞は……仮に会っているなら、私がただ忘れただけじゃない。そんな意味を持っているような気がする
白樹 澪
小さい頃に会ったこと、あったっけ?
瀬沢 蓮
……いや、無い
白樹 澪
なら今、どうして──
瀬沢 蓮
大概の奴ら、小さい頃は可愛いもんだろ
白樹 澪
ん? それ、今の私は可愛くないってこと?
瀬沢 蓮
……むしろ可愛いけど
白樹 澪
──っぅ
さらりと恥ずかしいことを言われ、私は自らの頬が熱を帯びていくのを自覚する
彼の目を見ていられなくて、慌てて下を向いて目を逸らした
さっきからとことん調子が狂う。だって……初対面なのに距離近いし、いきなりキスしてくるし、私が知らないところで私のことを知ってるみたいだし
それに──ちょっと嫌いなのに、蓮は私の思いなんてお構い無しに、気障な台詞を造作もなく言ってくるし
白樹 澪
……もう知らない
瀬沢 蓮
は?
蓮の良いように持っていかれているようで癪に障る。半ば八つ当たりでそっぽを向いた
──蓮と一緒だと、まるで私が私じゃなくなるような気がして、少しだけ、怖かった