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第1話

#1
白樹 澪
……ちょっと待って。今なんて言ったの?
あのな……ずっと言い続けていただろ?
今更じゃないか
白樹 澪
いやいやいや……
誰もが憧れるであろう、中世ヨーロッパを彷彿とさせる豪邸の、それはそれは絢爛な装飾が施された一室
客間のような間取りをしたその室内にて、革張りのソファに腰掛けた私、白樹しろきみおは、向かい合わせに座る父の言葉を聞いて顔を歪ませていた
今、目の前にいる私の父は紛うことなく過保護だ。私が一人娘だからって甘やかしすぎで……自他ともに認めるほど
だからって……だからって!
白樹 澪
私に専属のSPセキュリティポリスを付けるってどういうことなの?!
そのままの意味だ。澪はもう少し、社長令嬢だという自覚を持った方がいい。それと可愛いということも
白樹 澪
後半はどうでもいいとして、この件は何度も断ってきたじゃない! SPに守られるような大人しい令嬢じゃないから!
ん゛ん゛……いや、まあそれはそうなんだがな。ちょっと娘を持つ父親として悲しくなるから、それ以上は止めてくれ
だんっと、私と父との間にあるテーブルを拳で叩いて全力で主張する
身を乗り出す私に気圧されながらも、父は私を落ち着かせるように、どうどうと手を仰いだ
お世辞にもお淑やかとは言えない私は、幼い頃からじゃじゃ馬としてこの家の使用人たちを困らせてきたという武勇伝がある。そんなこともあり、私は運動神経が動物並に良くなり、逃げ足だけはすごく早かった
だからっ、有名企業の社長令嬢だからっていう理由で、SPを付けなくたって平気なの!
変な人が来ても逃げれるし……それに、これ以上学校で悪目立ちするのは御免こうむりたいんだもの!
白樹 澪
絶対嫌だから! なにがあっても!
澪……忘れたのか。小さい頃、一度誘拐されかけただろう
白樹 澪
う……でもそれは、小さい頃の話だし?
痛いところを突かれて、私はつい言葉に詰まる
幼稚園の頃、こっそり一人で出歩いていたら誘拐されちゃって……偶然居合わせた人が、連れ去られる前に助けてくれたらしい。私は覚えてないんだけど
でも、それとこれとは話が違うよね? しかもそれ、10年以上前の話だし!
白樹 澪
SPなんて要らないって。邪魔なだけじゃない
澪、実はな……今回は私からの推薦ではなく、立候補なんだ
白樹 澪
……立候補?
ああ。ぜひ澪のSPを……と名乗り出た人がいてだな
立候補、と聞いて、私の拒絶反応は一瞬で鳴りを潜めた
──私のことを守りたいって人がいるの?
確かに、私を守るってことはそれなりに名誉なことだろうから、立候補する人がいるのは分からなくもない。以前もいたみたいだけど、父さんのお眼鏡に適う人じゃない限り、私の前でその人の存在を話すことすら無かった
そっちSPの界隈では、私はSPを毛嫌いしている珍しい令嬢として有名らしいし……他に守るべき重鎮たちは大勢いるから、好んで私を守る人なんてごく少数と聞いていたけど
父さんがわざわざ私に言ってきた、ってことは……信頼出来るという確証がある人ということ。それはそれで気になる
まあ、そういう訳だ。明日から来てくれるらしいから、よろしくな、澪
最後に、これでもかというほど和やかで、してやったりと言わんばかりの笑顔を浮かべながら、父は目にも留まらぬ速さで部屋から逃走した
ばったんと、扉の閉まる無情な音が響き、嵐の前の静けさのような沈黙が部屋に漂う
白樹 澪
…………え
受け止めきれない事実を目の当たりにし、私は拒否することも肯定することもできないまま、一人間抜けな声を漏らした
──嘘でしょ。私、本当に専属のSPに守られちゃうの?!