第15話

昔の思い出
1,456
2020/03/29 23:27
エレン
エレン
ん、リサ!こっちだ!
リサ
リサ
あっ、うん!
リサ
リサ
ミリアンは?
エレン
エレン
まだ来てないぞ
リサ
リサ
そっか~、まだ仕事残ってるのかな
エレン
エレン
そうだ、新兵勧誘式どうだった?行ったんだろ?
リサ
リサ
実はね、私が小さい頃遊んでくれてたジャン兄が居たの!
エレン
エレン
ジャンと知り合いだったのか!
リサ
リサ
うん!
リサ
リサ
でね、エルヴィン団長が結構思い切ったことを言ってたけど、思ったよりも入る人多かったよ
ミリアン
ホントもう生存率三割とか言ったときは終わったと思ったよ
リサ
リサ
ミリアン!
ミリアン
ふふ、お疲れ様~
エレン
エレン
仕事まだ残ってんのか?
ミリアン
そうなの~、悲しくなるよホントに
リサ
リサ
どんな仕事?
ミリアン
入団する新兵の情報まとめる仕事
リサ
リサ
楽しそう!私掃除以外特にやることないし手伝おうか?
ミリアン
ホント?じゃあお願い!
リサ
リサ
うん!これ食べたらお部屋行くね
ミリアン
わかった!
リサ
リサ
そうだ、結局入ったのは何人だった?
ミリアン
十人くらいかな。二十人はいなかったよ
エレン
エレン
でも、十人も…、あいつら…
ミリアン
そっか、同期だもんねー。大切にした方が良いよ
リサ
リサ
うん、特別な存在だと思う…!
エレン
エレン
おう!
_________
コンコン
リサ
リサ
ミリアン、入るね
ミリアン
は~い
今整理し終わった書類をトントンと整えつつ、顔を上げてミリアンは言った。
リサ
リサ
私は何をすれば良いかな?
ミリアン
う~ん、じゃあ…ここら辺の資料にある、卒業成績6番の情報をこれにまとめてくれる?
ピラリ、と彼女が差し出す紙を受け取ると、それは名前や出身、卒業過程などを書く欄がある
リサ
リサ
わかった!
そう言うとミリアンは、また机上の沢山の書類に目を戻した。
リサ
リサ
(今ミリアンがやってるのは、5番の…エレン!すごい、エレンって5番だったんだ!)
リサ
リサ
(私がやる6番さんは誰だろう?)
机上に散っている7番、マルコ・ボットさんの資料をどけると、6番さんの資料が出てきた。
リサ
リサ
(あっ、6番さん__ジャン兄!?)
リサ
リサ
(ジャン兄…成績6番だったんだ…!すごく頑張ったんだな)
紙にペンを走らせながら、私は昔の思い出の箱を開けた。
─────────
リサ
リサ
ジャン兄、お邪魔します!
ジャン
ジャン
おー、来たかリサ!
玄関が開く音と私の声に、上からジャン兄が降りてきて、スリッパを出しつつ招き入れてくれた。
その後ろから、彼のお母さんも顔を出す。
リサ
リサ
お邪魔します、おばさん!
ジャンの母
ジャンの母
いらっしゃい、リサちゃん!
リサ
リサ
ママが、よろしくって言ってました!
ジャンの母
ジャンの母
そう~!ありがとね
今日はうちの両親が昼間出掛けるので、ママがお願いして、ジャン兄のお家にお邪魔させて貰うことになっているんだ。
スリッパを履くときに、もう一度小さくお邪魔します、と言うと、
ジャンの母
ジャンの母
リサちゃんは本当ちゃんとしてるわね~!
と、にっこり笑ったおばさんが、頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
えへへ、と私も笑う。
ジャンの母
ジャンの母
も~、ジャン坊は喧嘩ばっかりでね、今日も午前中喧嘩してきたのよ
リサ
リサ
えっ!?
ジャン
ジャン
バッ…っ、言うなよ母さん!
リサ
リサ
ホントだ…、いっぱい怪我してる…
リサ
リサ
ジャン兄、大丈夫…?私今バンソーコー持ってるよ、貼ろっか?
ジャン
ジャン
別にこんくらいどーって事ねぇよ
鞄から貼る気満々でバンソーコーを取り出していた私は、ジャン兄の声に、そっかぁ、としょげつつ笑った。
リサ
リサ
痛くないなら、よかった!
ジャン
ジャン
…んな涙目で言うなよ、ほらここ貼っていーぞ!
リサ
リサ
ホント!?やったー!
ジャン兄のほっぺにバンソーコーをぺたりと貼った。
リサ
リサ
ジャン兄、ありがとう!
ジャン
ジャン
んぁー、俺こそありがとな
にっ、とジャン兄が笑顔を浮かべた。
とくん、と心が音を立てる。
2歳違いの近所のお兄ちゃん、ジャン・キルシュタイン(通称ジャン兄)は、私のママとジャン兄のお母さんが仲が良かったため、よくお互いの家で遊んだり、家族ぐるみで出掛けたりしていた。私とジャン兄の子供だけで遊ぶときは、大体もう一人の近所のお兄ちゃん、トーマス・ワグナー(通称トー兄)も加わって、三人で遊んだ。
二人共とても優しくて、頭の回転も早く、二人は私の憧れだった。
そして、ジャン兄は───、気付いたときからずっと、私の好きな人だった。
ジャンの母
ジャンの母
二人共、おばさんちょっとお買い物に行ってくるから、お留守番よろしくね
ジャン
ジャン
わかった、母さん!
リサ
リサ
あ、はい!
おばさんの声にはっとした私は、笑ってそう言うと、おばさんがバスケットを持って家を出るのを、ジャン兄と一緒に手を振って見守った。
バタン、とドアが閉まる。
ジャン
ジャン
………
リサ
リサ
………
ジャン
ジャン
なぁ、リサ
リサ
リサ
なぁに?
ジャン
ジャン
ここらへんの探検いかねぇか?
リサ
リサ
!!
にやっと笑ったジャン兄が、手を差しだして言う。
リサ
リサ
うんっ!
その手をとって、私は、満面の笑みでうなずいた。
靴を履き、家を出る。
はぐれないようにしっかり手を繋いで、私とジャン兄は歩き出した。
その様子をいつも見ているおばさんの存在に気付いている私は、行ってきます、と笑って再び前を向いた。

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