第24話

第二章 地下
1,196
2020/05/28 01:57
リサ
リサ
…ん…あれ?ここどこ?
リサ
リサ
(なんか…薄暗いし、かたい…そのせいで体が痛いよ…)
??
起きたか
リサ
リサ
!!
??
へっ、ピクリとも動かねぇから死んでるのかと思ったぜ
リサ
リサ
え、あ…私、屋上から、落ちて…
ようやく何があったか思い出した私は、生きていることにおどろきながらにやにやと笑う二人の男の人──二人とも若くて、一人は金髪の背の高い人、もう一人は赤髪の縮れ毛の人だ───を見上げた。なんだか危険な雰囲気を覚えたが、まだぐらぐらする頭を起こして言う。
リサ
リサ
ありがとうございます、助けてくださったんですよね
今の自分にできる精一杯の笑顔を浮かべる。男の人達は一瞬驚いたように目を見開いた後、先刻よりも目を歪ませて、にやにやにやにやと笑った。
??
そうだなぁ助けてやったぜ?ありがたく思えや
リサ
リサ
あ…はい、お礼はいつか…私、今持ち合わせがな
??
いや、金は良い
リサ
リサ
え?
失礼ながら、二人の身なりや部屋のさまを見てきっとお金に困っているのに助けてくれたんだろうな、と想像し、掃除係で少しだけ貰えるお給料からお金を払おうと思っていた私は、素っ頓狂な声を上げた。

赤髪の男の人が、ぼろぼろのソファから立ち上がり、此方に近付いてくる。
リサ
リサ
ひゃ…
強い力で押されて、床に倒される。戸惑っている間に、赤髪の男の人は私の体に乗ってきた。
リサ
リサ
な、何を
??
代金は体で支払って貰う────俺達の後は、生きてるみてぇだから身売りで稼いで貰うぞ
リサ
リサ
み、身売り?
??
お前知らないのか?ここの育ちにしてはおかしな奴だな
リサ
リサ
え…?こ、ここは……
??
地下街だよ
リサ
リサ
地下街……!?
??
お前、もしかして地下街にはじめてきたのか?はっ、だとしたら俺はこれから清純なお嬢様の体を楽しむってわけだ
男の人のニタニタ笑いを見ながら、私の頭にはぐるぐると混乱が渦巻いていた。

私はトロスト区の旧調査兵団本部の屋上から落ちたはずなのに、どうして都の地下街にいるの?

体を楽しむってどういうこと?

身売りって、何?もしかして…人身売買…?


そこまで考えたとき、赤髪の男の人はその腕を振り上げた。
何か、おぞましいことをされる────!
本能的にそう感じた。
リサ
リサ
嫌だ…っ!
ゴッ
??
ぐぁ
私の腕は、自分も知らないうちに男の人の顔を殴っていた。赤髪の男の人は、後ろに倒れて動かない。
??
?!おい嘘だろ、失神してる?!
リサ
リサ
……はっ、は……あ
この感覚。

体の奥底から、力が湧き上がってきて、心臓の鼓動が大きく波打つ感覚。

以前も体験した。
リサ
リサ
…あの憲兵のおじさんを、殺した、時の…
そう気付いたとたん、私のその感覚は一気に引いて、かわりに悪寒と恐怖が私の脳を支配した。

このままでは、この人達を殺してしまうかもしれない───!
リサ
リサ
いやだ…!もう誰も殺したくない…!
すごい形相で迫ってくる金髪の男の人を見つめながら、私はこのままどうなってもいいやと思った。
リサ
リサ
(…何をされても、人を殺すよりはずっといい…!)
そう思って、目をつぶった。
男の人の爪がお気に入りの制服を裂く音が、耳に響いた。

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