第20話

旧調査兵団本部
1,467
2020/03/31 23:33
リヴァイ兵長が私のことを気遣って、ゆっくりと進んでくれている事が、脚の痛みと共に伝わってきた。何も言える事が無く私が押し黙っていると、リヴァイ兵長が口を開いた。
リヴァイ
リヴァイ
お前…、何故ここにいた
リサ
リサ
道に迷ってしまって…
リヴァイ
リヴァイ
馬鹿か。旧本部は本部を挟んで真逆だ
リサ
リサ
えっ…
リヴァイ
リヴァイ
お前を一人で移動させるのは無理なようだな
リサ
リサ
すみません…
リサ
リサ
(真逆…、違う方向に進んでいるのは分かってたけど、まさか真逆にいるとは…)
私が目線を下に落とすと、リヴァイ兵長はあと、と続けた。
リヴァイ
リヴァイ
以前も思ったが、お前は軽すぎだ。もっと飯を食べろ
リサ
リサ
えっ?!
リサ
リサ
いや、あの、ちゃんとご飯は食べて…ると思います、し、
リサ
リサ
以前って…以前も私リヴァイ兵長に持ち上げられて貰ったことありましたっけ…
思い起こそうとどれだけ記憶を遡っても、全く記憶にない。
リヴァイ
リヴァイ
…その時お前は寝ていたからな
リヴァイ
リヴァイ
俺の部屋で寝ていたのをお前の部屋に運んだ
リサ
リサ
えっ?!
リサ
リサ
(私…、リヴァイ兵長の部屋で寝てたの?!)
リサ
リサ
す、すみません!!あの、故意ではなく…、あっ、ペトラさんの部屋に間違えて入っちゃった時、その隣の部屋に入ったかも…あそこの部屋広かったし、もしかして…
リヴァイ
リヴァイ
俺の部屋だ
リサ
リサ
うっ…、すみません…迷惑かけてばっかりで…
リヴァイ
リヴァイ
………
沈黙。
私は旧本部に着くまで、スーミャの鬣を凝視しながら自分の行いを猛省していた。
────────
リサ
リサ
ここが、旧調査兵団本部…
そこは少し荒れた古城で、リヴァイ班の皆さんや、ハンジ分隊長、モブリット副長が揃って居た。
ハンジ
ハンジ
うぁぁぁぁあ!!ソニー!!ビーン!!
モブリット
落ち着いて下さい、ハンジ分隊長!!
リサ
リサ
(ハンジ分隊長…どうしたのかな)
私がぼうっとその様子を眺めていると、
エレン
エレン
リサ!
ペトラ
リサちゃん!
と、エレンとペトラさんが駆け寄ってきてくれた。
エレン
エレン
さっきは何があったんだ?地面に座り込んで…
ペトラ
泣いていたみたいだけど、何かまた嫌なことでもあった…?
リサ
リサ
そんなこと…!心配して下さりありがとうございます。エレンもありがとう
リサ
リサ
私、ここに向かおうとしてたんですけど、道に迷って…、地図を見ながら馬に乗っていたら転んで倒れて左脚が…
ペトラ
本当だ…、腫れてるじゃない!手当てをしなきゃ!私、救急箱持ってくるね!
ペトラさんはそう言うと、小走りで救急箱を取りに古城の中に入っていった。
エレン
エレン
大丈夫か?痛くないのか?
リサ
リサ
大丈夫!痛いは痛いけど、そんなには…
リヴァイ
リヴァイ
さっき自力で立てず馬にも乗れなかったのはどこのどいつだ
リサ
リサ
う…っ
エレン
エレン
リヴァイ兵長!!
後ろから声をかけてきたリヴァイ兵長に、エレンがバシッと敬礼する。私はすみませんとしか言えなかった。
リヴァイ
リヴァイ
痛くないなら馬から下りて立て
リサ
リサ
う…
エレン
エレン
そんなに痛むのか…
リサ
リサ
っ、ごめん…
エレン
エレン
手当てするとき、このままじゃなあ…リサ、足を両方ともこっち側に移してくれないか
リサ
リサ
?うん
私が足を右足をエレンの方に移動させると、エレンは私のうなじと膝裏に手を回し、抱きかかえて馬から下ろすと、古城の中のソファまで運んでくれた。
リサ
リサ
ごめん、ありがとう…
エレン
エレン
大丈夫だ!リサ、軽かったし
ニカッと笑ったエレン。良い友達を持ったなぁと思っていると、ペトラさんが救急箱を持って戻ってきて、私の足を手際よく手当てしてくれた。
ペトラ
よし、これで大丈夫!
リサ
リサ
ありがとうございます、ペトラさん
いいえ、とペトラさんが笑う。私は優しい上司にも恵まれたなぁと思った。その時、ふっとリヴァイ兵長の黒い馬が脳裏に浮かんだ。
リサ
リサ
(そういえば、あの黒い馬…私が選びたくても、選べなかった馬だったような……)
まあいっか、と私はゆっくり立ち上がった。
リサ
リサ
エレン、掃除は何時から?
エレン
エレン
この後すぐに始めると思うが…その足で掃除するのか?
リサ
リサ
もちろん!だって私は調査兵団の掃除係だからね!
さっきのエレンみたいに、私も痛みを吹き飛ばすくらい、ニカッと笑った。

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