リヴァイ兵長が私のことを気遣って、ゆっくりと進んでくれている事が、脚の痛みと共に伝わってきた。何も言える事が無く私が押し黙っていると、リヴァイ兵長が口を開いた。
私が目線を下に落とすと、リヴァイ兵長はあと、と続けた。
思い起こそうとどれだけ記憶を遡っても、全く記憶にない。
沈黙。
私は旧本部に着くまで、スーミャの鬣を凝視しながら自分の行いを猛省していた。
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そこは少し荒れた古城で、リヴァイ班の皆さんや、ハンジ分隊長、モブリット副長が揃って居た。
私がぼうっとその様子を眺めていると、
と、エレンとペトラさんが駆け寄ってきてくれた。
ペトラさんはそう言うと、小走りで救急箱を取りに古城の中に入っていった。
後ろから声をかけてきたリヴァイ兵長に、エレンがバシッと敬礼する。私はすみませんとしか言えなかった。
私が足を右足をエレンの方に移動させると、エレンは私のうなじと膝裏に手を回し、抱きかかえて馬から下ろすと、古城の中のソファまで運んでくれた。
ニカッと笑ったエレン。良い友達を持ったなぁと思っていると、ペトラさんが救急箱を持って戻ってきて、私の足を手際よく手当てしてくれた。
いいえ、とペトラさんが笑う。私は優しい上司にも恵まれたなぁと思った。その時、ふっとリヴァイ兵長の黒い馬が脳裏に浮かんだ。
まあいっか、と私はゆっくり立ち上がった。
さっきのエレンみたいに、私も痛みを吹き飛ばすくらい、ニカッと笑った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。