「あ…」
遅刻しそうで慌てて家を出た瞬間、誰かとぶつかりそうになり慌ててブレーキをかける。
「あ、のっ…すみません」
その人は私と同じように立ち止まったと思えばすぐに目の前で深く頭を下げて謝罪の言葉を言った。
「あれ?夏乃ちゃん」
「あ、美咲ちゃん」
夏乃ちゃんは真面目な子で優等生、明るく誰にでも優しく接しているから私目線で見れば人気者だ。
そんな夏乃ちゃんが珍しく遅刻ギリギリの時間に私の家の前にいることはかなり驚きだった。
「待って、とりあえず学校行こう!!」
私は話を区切り学校へ向かった。
信号は点滅していてもギリギリで渡り切って、いくつか角を曲がって、学校の方へ続く階段を登っていった。
「この学校って坂きついからやだよね」
夏乃ちゃんに話しかけると、夏乃ちゃんは苦笑いをしてそうだねと答えた。
夏乃ちゃんは小学校の頃から運動は得意だったから体力も多少はあるだろう、私に比べて息が上がっていない。
最後、学校へ続く坂道を登れば間に合う。
私はちらりと振り返り、真っ青な海を視界に入れた。
「もうここまで登ってきたんだ…」
私たちはギリギリで昇降口に飛び込み膝に手を当てて呼吸を整えた。
「よっ、お前らも遅刻?」
「あ、侑」
別に遅刻はしてないんだけどなぁと思いながらも笑って頷く。
それにしてもなんでこの時間に来て侑は涼しい顔をしているのかわからなかった。
「早く行こ」
夏乃ちゃんの声を合図に私たちは歩き出した。
きっと今心臓がバクバクなっているのは走ってきたからだよね?
私は胸に軽く手を当てた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。