結局私は、右手を繋いだまま家まで送られた。
侑は家がそれほど遠い訳でもないそうで、何も言わずに笑って暗い道を歩いて帰っていった。
家に帰ると、なんでそんなにびしょびしょなのかと親に悲鳴を上げられてしまい耳を塞ぎながらお風呂場に直行してシャワーを浴びた。
流石に冬に雨に濡れて帰ってきただけあって、シャワーが熱い。
「はぁ…」
今更ながら何してんの?って自分に尋ねる。
せっかく2人きりで相合傘して帰ったのに、何も話さずただ繋いでいる右手だけが気になってばかりいて、2人きりの時間を無駄にしてしまった気がする。
私は湯船に口元まで浸かり右手でぎゅっと拳を作って胸に当てた。
まだ感触が残ってる。
現実逃避もいいところだ。
来年にはきっと会えなくなる。それなのにこれでいいの?
私の心は霧がかかったかのようにモヤモヤとし続けていた。
家の外で降り続ける雨のパラパラとした音楽が心地よく耳に響いていた。
今夜はきっと、眠れない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。