気が付けば朝になっていた。
分厚い布団にくるまったまま少しだけ伸びをして、首だけ動かして辺りを見渡す。
特に変わりのない自分の部屋があるだけ。
枕元にある時計を確認すればいつも通りの時間。
起きなきゃなと意識しても、頭の中には昨日のことが残ったままで夢ですら見たくらいだった。
なんとなく今日は侑に会いたくないなぁと思うけれど、学校に行かないという選択肢は自然に消えていた。
いつも通り支度をして、いつも通りの通学路を通って学校へ行く。
何も変わらない、いつも通り…そういつも通りならよかったのに。
全部侑が引っ越すことを知ってから変わってしまった。
何をしていても憂鬱で、考えずにはられないくらい悲しくて。何もできない自分に腹が立つ。
教室のガヤガヤとした音も何も耳に入ってこない。
ただ視界の隅に捉えた侑の姿を横目で追いかけてみたりするものの最後は自分が辛くなるだけだった。
「おっはよーってどうしたの?」
いつも元気に挨拶をしてくる七海も今日は私の顔を見てやめた。
ほら、いつも通りのだったらこんなことにならないのに…全部侑のせい。侑が悪い。
そう決めつけてしまうのは自分がダメな奴だから。
全部嫌になる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!