春の甘い匂いに誘われて
気づいたら桜並木の道に立っていた。
桜の木の下
1人の人影が揺れている。
目を凝らしてみると、それが誰かはすぐにわかった。
大好きな人。
ふわりと風が靡いて、髪の毛がさわさわと揺れる。
この世に比べる物がないほど美しいその横顔に惹かれて俺は、ゆっくりと歩み寄った。
ヒョンが気づいて俺の方を見た。
すると、両手をいっぱいに広げて
「グガ…おいで…!」
そう微笑んで言った。
はぁ本当に大好きだ
早く温もりを感じたくて、ヒョンの胸を目掛けて走り出した。
もう少し
もう少し走ればヒョンに届く
その時、不思議な違和感を感じた。
前を見るとフィルターがかかったかのように薄くなっていくヒョンの顔
いやだ、消えていかないで
必死に走った。
でも、もう遅かった。
``グガ大好きだよ´´
そう言葉を残して、ヒョンは消えていった。
ねぇどこ行くの
早く抱きしめてよ
まだ間に合うかもしれない。
そう思って、精一杯
「ヒョン!!!!!」
その叫んだ瞬間、視界がぼんやりとして暗くなっていくのが分かった
また、同じだ__
頬からの冷たい感触で俺は目を覚ました
俺は毎日のように、ヒョンが出てくる夢を見る。
その内の多くは、俺とヒョンが仲良くしている夢だった。
あの頃みたいに
こんなん、忘れられるかよ
気を取り直して、音楽をかけた。
We were so beautiful…
久しぶりに聞いたこの曲。
思わずスマホを覗き込んだ。
Never not _
ヒョンと付き合って2年目の記念日に車の中でヒョンと一緒に歌った曲
あの時は、ラブソングに聞こえていたはずなのに、今聞くと失恋ソングにしか聞こえない
There’s a room in my heart
with the memories we made
僕の心には
2人の思い出を飾った場所があるんだ
Took ’em down but they’re still in their frames
壁からは外したけど額縁には入れたまま
There’s no way I could ever forget, mmm
忘れられる方法なんてないらしい
俺の気持ちを書いたかのような歌詞がすんなりと心の中に入っていった。
俺がヒョンを忘れることなんて
絶対、無理なんだろうな_
to be continued...
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。