翌日。
今日は沖縄での班行動の最終確認をするらしい。
でも、私は何処の班なんて当然知らない。
話を聞いていると、後ろの方から声が聞こえた。
確かこの声はトップの楪千棘。
同じグループの矢野琴葉と篠田徹は他のグループに入ったようだ。
海ってことは3日目に会うことになるのかぁ…
柚稀は楓、燎君、倉科君の班になっていたが、班の中で少しもめていた。
柚稀は何か言いたそうな表情を浮かべる。
その表情は何処か苦しそうにも見えた。
そう小さく声を漏らすと、燎君は少し眉を下げた。
柚稀が泳ぎたくない、か…
まぁ、単にダルいからと言う可能性もあるとは思うけど、聞いた感じ違うみたいだ。
私はそのとき、今まで何も見えず非の打ち所のない柚稀に初めて裏があるような気がした。
まぁ、知ったところで何もならないけど…
そんな曖昧な返事を返す。
このクラスはパッと見、明るいだけの教室。
でも、人には『裏』が必ずと言ってもいいほど、ほぼ確実にあるものだ。
それを探すのが癖になった私。
静かに学校生活を送ろうと、転校してまだ2日目だけど、既に体がうずうずして堪らなかった。
もっと上に…
いつか、あの楪千棘を蹴落とせないかな…?
…いやいや、そんなの何の為に転校したことに…
……でも。また、ぐっちゃぐちゃにしてやりたい。
そんな風に転校2日目にして、『下剋上教室』を再び始めるか始めないかを考えてしまっている酷い私が存在していた…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。