第70話

熱愛報道からの…
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2019/03/02 23:06
2日後、今度は柚稀が凌久に呼ばれていた。
今回は倉科君達がいる前で。
空閑 柚稀
何。
榎本 凌久
空閑。お前、熱愛中って?
空閑 柚稀
え、何それ。
燎 颯斗
え、柚稀。彼氏いたの!?
空閑 柚稀
そんなわけないでしょ。
榎本 凌久
これ見てみろよ。
そう言って、凌久が千棘が読んでいた週刊誌を取ると、ページを捲って柚稀に見せた。
大きな字で書かれていたのは…
「天才役者、漣悠翔。熱愛発覚!?」
榎本 凌久
この「お相手は同じ学校に通う高2の先輩」って写真的にも空閑だろ。
柚稀がマジマジと記事を見つめると、本気で驚いている表情を浮かべた。
空閑 柚稀
今どきって有名人と一緒に何処か行くだけでこんなになるもんなの?
榎本 凌久
いや、普通に考えてそうなるだろ。
空閑 柚稀
えぇ…待って。これ本人に迷惑…
そう呟いたとき、廊下からバタバタと音が聞こえ…
漣 悠翔
ねぇ、これどういうこと!?
三室 弥生
あ、本人来た…
週刊誌を手にした悠翔君が理解不能と言いたそうな顔をして、廊下から大声で言う。
空閑 柚稀
知らな〜い。
漣 悠翔
知らないって…俺、色んな意味で誤解されるし、嫌なんだけど。
空閑 柚稀
こっちこそ。何で間違われるのさ。
夕凪 沙羅
ん、悠翔君。柚稀ちゃんと付き合ってるんじゃないの?
漣 悠翔
そんなわけないじゃないですか。この写真って母さんの誕生日プレゼントを買いに行くのについてきてもらっただけですし。
倉科 拓哉
漣悠翔の母親と言えば…
何か思い出したように倉科君がそう口にする。
倉科 拓哉
天才プロバスケプレイヤーの空閑瑞稀さんだったよな?
漣 悠翔
まぁ、はい。
その言葉にクラスが静まった。
すると、今度は…
漣 悠翔
あ、これ。
薄く大きめの本みたいな物を悠翔君が柚稀に渡す。
空閑 柚稀
………何これ…。
漣 悠翔
父さんが前の学校での劇を見て、カムパネルラ役で渡せって。
夕凪 沙羅
え、柚稀ちゃんがInfinity劇団の劇でカムパネルラやるの?
漣 悠翔
そうらしいです。
夕凪 沙羅
柚稀ちゃん、入ってた?
空閑 柚稀
入ってない……。
夕凪 沙羅
じゃあ、何で…
空閑 柚稀
…悠翔。
漣 悠翔
何?
空閑 柚稀
スマホ、貸して。
珍しい少し怒り気味の柚稀の声に悠翔は無言で言われた通りにスマホを渡す。
柚稀はスマホを操作するとスグに悠翔君に返す。
空閑 柚稀
じゃ、熱愛なんかしていないって報道陣に伝えといてよ。あとあのクソジジイに早く死ねって伝えといて。
漣 悠翔
はいはい。
そう言い、悠翔君はいなくなった。


すると、沙羅が…
夕凪 沙羅
ねぇ、柚稀ちゃん。
空閑 柚稀
今度は何。
夕凪 沙羅
今さっきのクソジジイって誰に向けて言った?
空閑 柚稀
アイツだよ、漣和久。
夕凪 沙羅
あの漣さんをそんな呼び方で呼ぶとかやめて。
自分の姉を育ててもらっている人をクソジジイ呼ばりされるのが嫌だったのか怒ったような表情を浮かべている沙羅。
柚稀は呆れた顔で…
空閑 柚稀
どうせバレるから言うけど、別に自分の"親"をなんて言おうが勝手だよ。
榎本 凌久
は?え、何、お前。じゃあ、今の漣悠翔の姉ってことか?
空閑 柚稀
そうだけど?その熱愛報道だって悠翔が母さんのプレゼント選び一緒に考えてって言うから一緒に選んだだけ。
手に持った『銀河鉄道の夜』の台本を机に投げて、柚稀は自分の椅子に座る。
空閑 柚稀
それで、あのクソジジイは大っ嫌い。何でアイツの劇に…
マジか……。
まさか、柚稀があの漣和久さんの子供って…
空閑瑞稀さんという名前を聞いた瞬間、クラスの大半の人が何となく察した。
空閑 柚稀
で、何?榎本。まだ熱愛報道だの何だの言って何かさせるつもり?
柚稀が凄い不機嫌そうな表情で榎本を見る。
榎本はつまらないものを見たような顔で…
榎本 凌久
いや、いい。
すると、いつの間にか怜央が横にいた。
桃原 怜央
全然、熱愛じゃなかったな。
三室 弥生
普通に姉弟だったとは…
桃原 怜央
でもさ、空閑はまだあるだろ。
三室 弥生
うん、私もそう思う。
柚稀の名字は"空閑"で、母親の名字だ。
そして、異常に父親の漣和久さんを嫌っている。
有名人の妹の沙羅みたいに有名人の姉だって言って胸を張ることだって出来る。
なんなら、それでトップになることも出来る。
でも、柚稀はそれをしない。
ましてや、漣和久さんや悠翔君との関係をバレないように隠そうとしていた。
親のことを"クソジジイ"や"アイツ"って呼んでいるところもかなり気になる。
と、なると、柚稀は漣和久ともめているってことになるよね…。
本気でイラついている柚稀。
なんて声をかけたらいいのか分からなそうな倉科君達がいると、教室のドアが開き…
先生
定期試験の結果、少し遅れたけど今、張り出したから、各自見とけー

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