月曜日は学園祭の片付けだけで午前授業。
午後は沙羅と繁華街に遊びに来ていた。
沙羅が事前に調べていたのかどんどん私の手を引っ張って1つの喫茶店に入って行く。
そこは爽やかなBGMが流れる明るい店だった。
窓際のテーブル席に座るマスクをした男子とその向かいに座るスーツ姿の男性が話している様子は打ち合わせのように見えた。
沙羅が私の後ろにいる男子に声をかける。
ゆっくりと振り向いた男子は私が見間違えるはずもなくどう見ても徹だった。
世間から異才と呼ばれた皇唯我。
神童・黒崎錬に並び中学入学と同時に完全にテレビから消えた第二の天才。
黒崎錬には一歩劣るが、勉強運動は共に優秀。
大人に負けない演技はかなり有名だ。
言われてみれば、雰囲気は違うけど顔は似てる気もする…。
そのとき、喫茶店の外からザワついた声が聞こえて来た。「カランカラン…」と喫茶店らしい音ともにドアが開く。
店内に入って来た高坂さんを見て、男性と徹は立ち上がった。
花束を持った柚稀が高坂さんの腕の中で掠れた声を出しながら暴れていた。
柚稀の必死な抵抗に高坂さんは柚稀を降ろす。
大きく咳き込む柚稀は本当に風邪を引いているようだった。
そう言いながら、徹はテーブルに置かれていた紙を私に見せてくれる。
そこには超有名な芸能事務所に元所属と書かれた皇唯我の名前と無所属の柚稀の名前が主役のところに書いてあった。
頭を下げる2人に徹と柚稀が困ったような表情を浮かべていた。
そのまま席に連れて行かれ、4人で話を進め始め、私は沙羅と聞かないようにすることにした。
徹が隠していたのはそのこと?
なら、皇唯我を辞めた理由はきっとギターをやりたいからだったのかな…。
まぁ、これでまた1つ秘密を探れたけど…
……この情報を持っていても、徹を落とす気があまり無いから使えないんだよなぁ…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。