第135話

真実
1,954
2020/01/27 11:41
三室 弥生
いつから琉希になりすましてたの…?
空閑 柚稀
放課後に日誌持っていく前に琉希と服を交換した。
三室 弥生
…ということは?
空閑 柚稀
君を殴ったのは私です。
全体的に短く髪を切ったことで前髪でいつも見えなかった目が両方見えていつもに増して柚稀が中性的に見える。


いやいや、柚稀は先生に日誌を渡していた。
確かにあれは柚稀だったよね?
三室 弥生
え、待って待って。だって、柚稀は先生に日誌を渡してたじゃん。
空閑 柚稀
あぁ、あれ琉希だよ。
三室 弥生
えっ!?いや、柚稀でしょ!?
空閑 柚稀
琉希だって。似てるから私と琉希が交換しても分からなかったんでしょ。
三室 弥生
いやいやいや、あれは柚稀…
空閑 柚稀
はぁ〜…もうさ〜、何?私と琉希が双子だったから変装しても分からなかったって言ったら分かる?
三室 弥生
はぁ!?双子!?
空閑 柚稀
そっ、双子。最初はまさかと思った。でもさ、実際に調べ尽くしたらそうだったんだよね。
三室 弥生
じゃあ、琉希が美容院って…
空閑 柚稀
私の格好で行ってるよ。
三室 弥生
何で?
空閑 柚稀
私が…いや、"俺"がてめぇを殺すことへのアリバイ工作だ。
柚稀が足を組み替えながら話す声は段々低くなっていき、左目に手を近付け離すとそこにはいつしか見たあの青い瞳があった。


その瞳を見て、私の背筋は凍りつく。


何回見ても変わらない反抗的な目。
何回砕こうと屈しなかったそのウザさ。
何回煽っても、何回笑っても1度も怒らなかった。


そんなムカつくやつは多分、死んでも一生忘れることはないだろう。


コイツは紛れもない、私が1番嫌いな…
三室 弥生
黒崎錬……
空閑 柚稀
そうだ。さっき、言っただろ?俺が黒崎錬だって。俺はずっと待ってた。お前と峰本沙月があの日、アイツを追い詰めて自殺に導いた日からずっとお前らを殺したくてたまらなかった…。
指に摘んでいたコンタクトレンズがプチっと音を立てて潰れる。
声色は静かなものだったが、確かにその柚稀の…錬の目には怒りの色が浮かんでいた。
空閑 柚稀
血族関係。琉希と血は繋がっているが書類上は繋がっていないことになっている。何故か、それは母さんが俺と琉希を産んだ時、琉希の母親が片方を連れ去ったから。これでアリバイは成立する。その時間は美容院に行っていましたってな。
そうだ…徹がまたいるんだ…!!
三室 弥生
琉希がお前を誘ったあの時の会話は徹も聞いている…証言者ならいる…。
空閑 柚稀
どうした?さっきまでの勢いは?空閑柚稀が黒崎錬だったって分かった途端にその態度?
三室 弥生
うるさい!負け犬が!!!!
空閑 柚稀
負け犬はどっちやら…まぁ、証言者なんかいないよ。唯我には事前にこのこと話してあるんだから。
三室 弥生
え…?どういう…こと…?
空閑 柚稀
唯我は分かってくれたよ…。真剣に話したかいがあった…これで…これで何も心残りなしにアンタを殺せる。
いつものように柔らかく微笑んだ錬が私の手足の拘束を解く。


その瞬間、錬の顔が青ざめてその場に座り込む。
視線は屋上への入口に向いていた。
三室 弥生
え、な、何…?
空閑 柚稀
うわっ!何だよ、お前…!?こっちに来んなよ…!!!
屋上の入口には何もいない。
でも、何かがそこにいるように見えた。
空閑 柚稀
俺を殺す気!?…って、危ない!!!
突如、強い風が吹いて錬が青ざめた必死の表情で私に向かって手を伸ばす。
空閑 柚稀
逃げて!!!三室姫華!!!!!
三室 弥生
っ!?
私は押されるように立ち上がって、後ろに慌てて逃げるように下がる。
その瞬間、私の体は柵を乗り越えた。
三室 弥生
えっ…?
月がとても綺麗に見える。
あとは口元が三日月に動いた錬の姿も見える。
空閑 柚稀
……ねぇ?言ったでしょ?自殺してもらうって。俺は役者。どんな姿にでもなれる。それが例え…現実には無いものでもな。
その声を聞くと、私の体は重力に従って地面へと落下を始めた。
アイツも落ちる時こんなのだったのかなぁ…
あんな風にコイツが上から見下ろして…
何故か私の目から涙が出てくる。
何でなのかは私自身も全く分からない。


落ちる時間がとても長いものに感じる。
物を落としてそんなに地面までの時間はかかるはずなのにもう何十秒も経っている気がする。
そっと目を開くとそこには1人の男子がいた。
男子
ざまぁみろ。
私がその男子のことを名前まで認識したとき、目の前にはグラウンドがあったのだった………。

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