翌日、教室に来た麗美は目を見開いていた。
「死ね」と落書きされ、床に倒れている机。
ロッカーに入っていたはずなのに今はゴミ箱に捨てられている教科書、体育着。
唖然とする麗美を見て、沙月達はニヤニヤと笑っている。
何故、自分がこんな目に遭うのかを全く理解出来ない麗美が少し苦しそうな顔をしながら片付けをする。
掃除が終わって麗美は私のところに来た。
何で私に聞くの?
私がやったとでも思ってるわけ?
麗美がとぼとぼと俯き席に戻る。
今回のことにより沙月の標的は麗美になり、クラスの全員が無視した。
ただ1人を除いて……
有咲が麗美を押し退けるように私に話す。
何でいつも仲間外れにしたお前が、軽々しくこっちに来るんだよ…。
まぁ、これも使えるし…
敢えて、"有咲"の名前を呼ぶことにより、私が有咲に対して返事をしたことを強調する。
それがいつも私がやられたこと。
たまには思い知った方がいい。
穂花だけは誰にでも話しかける。
自分が5軍という立場にいても関係なく。
体育の時間。
まずは2人1組でストレッチだった。
足を広げ、有咲が背中をゆっくりと押す。
すると…
あることないこと吹き込んで麗美を落とそうとしている本人が何か言っている。
悩んでる風に見せるが、内心は笑っていた。
こんなに簡単に1人目の脱落者が出るとか。
ここで「1軍を狙おう」とでも有咲に言えば、簡単に使えそうだね…。
それなら今は距離を置いた方がいい。
"私と有咲"ということで仲間意識を出す。
有咲はいつも人の上に立ちたい性格。
なら、この提案には乗ってくれるはずだ。
ほら、簡単に乗ってくれた。
私はそう言い、笑う。
その笑みは1軍への挑戦。そして、有咲という使える仲間が手に入ったことへの笑み。
もう麗美は5軍に落ちた。
そのうち、不登校になるだろう。
まぁ、私が1軍になったら戻ってくる。
有咲がそう言い、昼休みに攻める順番を話し合う約束をした。
この後はバスケ。
さて…チーム分けはどうなるかな?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。