次の日、楓は学校に来なかった。
あのままサボりで来てないと思っていたけど、朝学活が終わったところで燎君が少し焦ったような表情になっていることに私は気が付く。
楓が行方不明、ね…。
琉依と同じように楓もヤンキー感満載でサボり癖があるイメージがあるが実際は全く違う。
本当に熱とかにならない限り学校に来る。
それに楓は燎君の護衛係なら尚更、学校には病気じゃないなら来るはずだ。
ボソッと呟きながら、スカートのポケットに自然と手を突っ込んだ柚稀。
やっぱ、楓がいなくなるのが嫌なんだ。
その日の授業と終学活が終わり、みんなが学園祭のクラスの出し物の準備をし始めたときに私と沙羅、それぞれ違う内容を書いてある紙を柚稀は渡してくれた。
走っていなくなった柚稀。
沙羅は「大変だね。」と言うと、作業に戻った。
楓が消えた次の日、今度は柚稀が休んだ。
そう笑っていたのは凌久だった。
いつもの嫌味な笑みを浮かべて、燎君を見ている。
お互いに嫌悪感を持っているみたい…。
そんなことを私は思う。
燎君と凌久がぶつかると大抵…いや、ほぼ確実にピリピリした空気が流れている。
何でお互いにここまでこんなに嫌ってるのかは知らないけど。
その声に燎君が窓際の席に戻って行く。
戻って行く燎君を見ていると、「届け出てんだから、生徒の心配くらいしろよ…」と聞こえたような気がした…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!