第109話

…正義って何。
2,016
2019/05/06 05:17
女子
…なぁ。
黒崎 錬
……。
あれ?私、何してるんだろう…。
口が勝手に動いたことで私は夢を見ていることに気が付いた。
どうやら、自殺するよりも前みたいだ。


目の前にはあの黒崎錬がそっぽ向くようにずっと机に肘をついて外を眺めている。
女子
話しかけてんだけど。
黒崎 錬
…何で俺に話しかけてんの?
女子
はぁ?
黒崎 錬
俺と話したら峰本達にいじめられるだけだから、話しかけない方が得だ。
女子
…強者は弱者を守る。それが私の当たり前だから。
黒崎 錬
!……
私が言った言葉に動きがピタリと止まったと思うとやっとこっちを向いた。


左右で色が違う瞳が特徴的だった黒崎錬は本物も左右で黒と深い青と色が違う。
そして、左目上の額に傷跡があるのも特徴。
仲良かったときに見つけたことだけど、琉希の額に何かの傷跡があった。
本人曰く、「餓鬼の頃、ちょっと高いとこから落ちたときに出来た」と言っていた。
多分、木登りか何かで出来たんじゃないかな。
目なんて今の時代、カラコンで一発だし。
黒崎 錬
俺が弱者、ねぇ…。別に負けたつもりはないけど。
女子
クラスで立場は悪いでしょ。
黒崎 錬
まぁな。それに比べ"るー"は正義感の塊とか言われて嫌われるはずなのにアイツらも狙わない。
女子
嫌われてるのは知らない。
黒崎 錬
あ、そうなんだ。
女子
うん。
この時点で2つ分かったことがあった。
まずはやっぱり主犯の1人が沙月だってこと。
次に黒崎錬は死んだこの子と親しかったこと。
親しくない人をあだ名では呼ばないだろう。
黒崎 錬
気になってたんだけど…正義って何。
女子
は?いきなり何?
黒崎 錬
何となく。何が正義で何が悪?
女子
う〜ん…
そう考えるように呟きながら、女の子は黒崎錬の隣の席に座った。
女子
…まぁ、正義は人それぞれだから正解は無いと思う。でも、いじめと暴力は駄目、これは当たり前の正義になるんじゃないかな。
黒崎 錬
じゃあ、アイツらは悪?
女子
うん。考えてみなよ?錬は何もしてないじゃん、ただ生きてるだけ。それを見た目とかで差別するのは私の中だと悪に決まってる。
黒崎 錬
へぇ…
女子
いつも冷めすぎ。もっと感情ってのは無いわけ?
黒崎 錬
毎日がつまんねぇからな。
女子
目が死んだ魚になってる。
黒崎 錬
失礼だぞ。別に…なりたくてなってるわけじゃないし…
女子
じゃあ、何?
黒崎 錬
るーは知らなくていいよ。知っても得なんてない。
女子
………ムカつく。
黒崎 錬
は?
女子
そんなに私のこと、信じられない?他の人達に比べたら頼りやすい方だと思うけど?
黒崎 錬
いいや、るーのことは信じてるよ。ちゃんと俺の事分かってくれるからこそ知らない方がいい。
黒崎錬が手をヒラヒラとさせると、いつの間にかその手には一輪の花が握られていた。
黒崎 錬
るー、これあげるから勘弁してよ。
女子
えぇ!何それ!
黒崎 錬
意外と誰か落ち込んでる時にこれやったら、少し和むんだ。
女子
私も覚えたい!教えて!
黒崎 錬
いいよ。
「あげる」
いつしか瑞稀さんの死に落ち込んでいた柚稀に琉希がやっていたちょっとしたマジック。
確かにあのときのマジックを見て、柚稀の表情は少しだけだけど和らいでいた。
女子
ほんと、錬は魔法使いみたいだね!
黒崎 錬
…俺から見たら、るーが魔法使い。
花を見ながら、小さく笑った黒崎錬の表情は琉希と物凄く似ていた…。

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