あれ?私、何してるんだろう…。
口が勝手に動いたことで私は夢を見ていることに気が付いた。
どうやら、自殺するよりも前みたいだ。
目の前にはあの黒崎錬がそっぽ向くようにずっと机に肘をついて外を眺めている。
私が言った言葉に動きがピタリと止まったと思うとやっとこっちを向いた。
左右で色が違う瞳が特徴的だった黒崎錬は本物も左右で黒と深い青と色が違う。
そして、左目上の額に傷跡があるのも特徴。
仲良かったときに見つけたことだけど、琉希の額に何かの傷跡があった。
本人曰く、「餓鬼の頃、ちょっと高いとこから落ちたときに出来た」と言っていた。
多分、木登りか何かで出来たんじゃないかな。
目なんて今の時代、カラコンで一発だし。
この時点で2つ分かったことがあった。
まずはやっぱり主犯の1人が沙月だってこと。
次に黒崎錬は死んだこの子と親しかったこと。
親しくない人をあだ名では呼ばないだろう。
そう考えるように呟きながら、女の子は黒崎錬の隣の席に座った。
黒崎錬が手をヒラヒラとさせると、いつの間にかその手には一輪の花が握られていた。
「あげる」
いつしか瑞稀さんの死に落ち込んでいた柚稀に琉希がやっていたちょっとしたマジック。
確かにあのときのマジックを見て、柚稀の表情は少しだけだけど和らいでいた。
花を見ながら、小さく笑った黒崎錬の表情は琉希と物凄く似ていた…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。