火曜日、学校に行くと次の実行委員会のときにとか言っていた倉科君が気になったのか柚稀が来る前に声をかけてきた。
私の席の周りでそんな会話が続いて数分後、燎君が教室に到着しその後ろからついてくるように楓が到着した。
燎君はこっちに来たが、楓は自分の席へ。
単刀直入に聞いた倉科君に燎君は言葉を濁らしてボソボソと何かを言う。
そのとき、私はこの話を凌久が盗み聞きしていたなんて知らなかった。
そして、聞いてたとしてそれを利用して八つ当たりをしようとしてるとも思わなかった…。
突然、結んであった楓の髪が下ろされる。
後ろには長い金の髪が何本か絡んでいる髪ゴムを持っている凌久が立っていた。
凌久が蹴った椅子は大きな音を立てて倒れ、座っていた楓も慌てて立ったが、少しよろけた。
間を与えず、顔面を狙った凌久の強い拳は楓が掴んで止める。
眉間にシワが寄ったと思うと、楓が凌久の顔面めがけて拳を繰り出したが、ハッとした表情になると、当たるすんでのところで止めた。
そう言い、教室にいる全員に聞こえるくらいの大きさの舌打ちをすると、荷物をまとめ始めた楓。
リュックを背負い、机の上に置かれていたスマホを乱暴に取ると、教室からいなくなった。
追いかけようかと足を一瞬だけ廊下に向けた燎君が立ち止まり、柚稀は視線を下に落とす。
柚稀、何で動かないんだろ…あ、下手に動いたら凌久に弱味を言われる可能性があるのか。
嫌がらせをするだけして楓を帰らした凌久がニタリと気味の悪い笑みを浮かべる。
その笑みにはこの先にまだ続きがあると、言ってるようにも見えた…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。