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第150話

2学期 _ 幼馴染
沙羅ちゃんと拓哉が付き合い始めた日の放課後、私は拓哉と目も合わせずに流すように練習を進めてさっさと片付ける。
燎 颯斗
ねぇ、柚稀…
空閑 柚稀
…私には関係ない。どうするも拓哉の勝手だよ。
燎 颯斗
そうだけど…
空閑 柚稀
もう付き合ってるんだから。
それだけを告げて私は体育館の鍵を閉める。

先に帰るよう伝えると職員室に鍵を戻して、私は正門ではなく裏門へと向かった。

黒いボックスカーの隣で微かに星が光る空を眺めていると私が待っていた人がやって来る。
井上先生
何でいるの……てか、何かデジャブ的なの感じるんだけど。
空閑 柚稀
気のせいっしょ。
教育実習生の井上せんせー…いや、幼馴染の澪晴が鍵をクルクルと回しながらやって来るが、私を見るなり苦笑する。
井上先生
どーせ、家まで送って!…とか言うんだろ?
空閑 柚稀
流石、せんせー。送ってー
井上先生
はいはい…ほら、早く乗れ。
空閑 柚稀
ありがと〜
後ろに座りシートベルトをすると私は細い溜息を吐きながら、黒いカラコンを左目から取った。

別に澪晴は俺が幼稚園の時からの知り合いだから、気を使う必要がない。

そして、車が発進したと思うと既に噂になってるのか澪晴がすぐにあの話題を口にした。
井上先生
そういや、何か夕凪ちゃんが倉科君に堂々と告ったって?女子達が騒いでたけど。
空閑 柚稀
ああ…耳に入ってるなら話が早い。
井上先生
え、何その言い方。まさか…また俺に頼み事する気?
空閑 柚稀
うん。
井上先生
千代瀬に教育実習生として入るだけでも大変だったのにまだあんのか〜…
空閑 柚稀
別に聞いてくれなくてもいいけど、そしたら俺の口が滑っちゃうかも?
井上先生
あ"ぁ〜っ!そっちの方が無理!!
実を言うと澪晴が教育実習生としてやって来たのは三室姫華である三室弥生の情報を手に入れる為に俺がやれやれ言ったからだった。

勿論、学校では教師と生徒でいる。

千代瀬の教育実習は人気で来れる可能性がかなり低いとか何とか愚痴っていたが、それは澪晴の黒い過去を隠すことで言うことを聞いてもらった。

だから、色々と裏は取れたけど今回のは予定外だし俺じゃどうしようも出来ない。
井上先生
はぁぁ……今回は?
空閑 柚稀
拓哉に何があったのか聞いてきて。
井上先生
倉科君?
空閑 柚稀
夕凪沙羅に脅されて付き合ってる。
井上先生
脅し?でも、確かに夕凪ちゃんって完全に裏がある側の人だよなぁ。倉科君のこと好きそうだったし。
空閑 柚稀
分かってるじゃん。
井上先生
で、柚稀は何でそう思ったわけ?
空閑 柚稀
いきなり告られて困ってた拓哉に夕凪沙羅は今の黒崎錬が俺だと言って、バラしていいのか的なことを言ってるように見えた。
『あの黒崎錬君の今って柚稀ちゃんだよね…?見てて凄い静かに暮らしたそうだけど……』


厳密に言うと夕凪沙羅の口元を見ていて俺が読み取ったのはこれだった。

直接的ではないけど、遠回しに脅している。
井上先生
怖い怖い。
空閑 柚稀
だろ?
井上先生
ああ。一応、聞くけど倉科君は夕凪ちゃんのこと好きなの?
空閑 柚稀
多分だけどない。でも、拓哉のことだから俺や颯斗、楓には何が何でも話してくれない。だから、生徒からの相談相手に人気の澪晴に頼みたいんだ。
井上先生
りょーかい、それなら任せとけ。いけそうな時にやってやる。
空閑 柚稀
俺は拓哉が幸せだと思えるように生きて欲しい。ほんと頼んだよ。唯一無二の友達だから……
井上先生
心配すんなって、柚稀。お前でも無理な時は俺が手伝うからさ。
空閑 柚稀
ありがと…




















数日後の昼休み、教室で三室ちゃんと篠田君、八代君と話していると廊下からの怒鳴り声。

そして、珍しくキレ気味の倉科君が柚稀達との絶交を宣言して4人は完全にバラバラになった。


…………さてと、俺の仕事の時間かな。
井上 澪晴
話を聞くか…。倉科先生も気になるだろうし……
わざとそう呟き、俺はスタスタと歩いていく倉科君の後を追いかけた。

いつも独りだという考えに囚われる柚稀が人に頼ることはそうそうない。

だからこそ、頼られた時には常に応えていた。

今回も応えるし、それが柚稀が友達って認めてる子についてなら尚更な。
井上 澪晴
おいおい、喧嘩なんかしてどうした?
倉科 拓哉
!……井上先生…
人があまり通ることの無い階段下で倉科君は怒りの色を顔に浮かべながら壁によっかかっていた。


まずは話せる状況を作って怒りの原因を聞いてから柚稀に頼まれたことを聞くか…
井上 澪晴
いつもはお前ら仲良いじゃん。
倉科 拓哉
別に…
井上 澪晴
…夕凪ちゃんと付き合ってから一気に雰囲気が悪くなったような気がするけどそれは関係あるか?
俺がそう聞くと、倉科君が一瞬固まった。

図星、夕凪ちゃんとの交際に何か問題がある。
倉科 拓哉
……………はい…。
井上 澪晴
何があったのか…良かったら俺に話してくれない?誰にも言わないからさ。
倉科 拓哉
………ただ夕凪に仲良くするなって言われただけ…。
小さい答え。

答えてはくれたけどまだ言ってないことがある。

誰か来ないかを気にしてるし、心の中で何か迷っているのは見てすぐに分かった。
倉科 拓哉
俺だって言いたくないんだよ、あんなこと…颯斗も普通に何で付き合ったのかって聞いてきただけだし…
井上 澪晴
普通に理由を答えてあげれば良かったんじゃ?
倉科君は首を横に振るだけだった。
倉科 拓哉
……理由が理由で言えない…。
井上 澪晴
……。
倉科 拓哉
…絶対に言わないって約束したから……
"約束した"と言うと、さっきまで俯いていた倉科君の顔が上がる。
倉科 拓哉
…俺は1番大切な人が感じる幸せを守ってやりたいんだ。
その顔は少し寂しげだったが、少しだけ微笑んでいるようにも見えた。
井上 澪晴
………そっか。
倉科 拓哉
だから、問題無い…ただアイツと付き合うだけで時は過ぎる。
そう言い残すと、倉科君は気持ちが落ち着いたのか壁から離れて歩き去った。
『拓哉が幸せだと思えるように生きて欲しい』

『1番大切な人が感じる幸せを守ってやりたい』
お互いに想った結果が今、って感じか…。