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第95話

夕方の教室
琉希が倉科君に言った制限時間は放課後。
その意味はスグに分かった。
今日の放課後は委員会や部活があって、みんながスグに教室からいなくなる。
凌久は千棘のことを放って、先に帰ってしまった。


私も徹と帰ろうとしていた時…
三室 弥生
…あ、宿題忘れた。
篠田 徹
取って来たら?
三室 弥生
うん。ちょっと待ってて。
教室の机の中に明日提出の宿題を忘れたことを思い出した私は早足で教室へ。
すると、燎君と楓、琉希が廊下にしゃがみ教室の様子を窺っていた。
三室 弥生
え、どうし ──
月城 楓
ちょっ…
聞こうと思った瞬間、楓に口を手で押さえられながら引っ張られる。
静かにと人差し指を立てる楓を見て、私は無言で頷くと教室を覗く。
そこにはピリピリとした空気の中に柚稀と倉科君が無言で向かい合っていた。
三室 弥生
これってどうしたの…?
燎 颯斗
柚稀が退部届けを拓哉に出してんの…千代瀬は親、顧問、部長のサインがあって初めて退部出来るから…
八代 琉希
……。
確か琉希と楓は委員会に入っていた。
それをサボってまで…
そんなことを思っていると、教室から声が聞こえ始めた。
空閑 柚稀
退部届け、あとは部長のサインがあれば先生に出して無事に退部。
倉科 拓哉
ああ…。
紙を机の上に置く音とペンの取る音。
でも、ペンが動く音はしない。
空閑 柚稀
どうした?早く書きなよ。こんなやつがいても部活に集中出来ないでしょ?
倉科 拓哉
……。
急かすように言った柚稀。
すると、ペンが動く音が聞こえてくる。
八代 琉希
はぁ…?拓哉のやつ、書いてんの…?
月城 楓
みたいだな…
八代 琉希
マジかよ…
燎 颯斗
これ、止めた方がいいかな…
月城 楓
…いや、拓哉と柚稀の問題だ…。こっちが言うことはもうない…
三室 弥生
声聞こえるよ…
ペンの動く音が途切れるとまた2人が話し出す。
倉科 拓哉
ほら…
空閑 柚稀
ありがと。
倉科 拓哉
……。
空閑 柚稀
それじゃ、何ヶ月?1ヶ月ちょいか?学校とかバスケ部で凄いお世話になりました。
倉科 拓哉
学校で?
空閑 柚稀
…あ、言ってなかった。いつになるかまだ分からないけど11月の間に前の学校に転校するつもりだから。
倉科 拓哉
は?
空閑 柚稀
がこの学校に来たのは"バスケを教えるため"。バスケ辞めるならいる必要ないじゃん?それなら私は琉依のところに戻りたい。
柚稀が退部届けを取り、逃げるように教室から出ようとする。
廊下に出てきて、私達は見つかると思った時に柚稀は立ち止まって後ろを向いた。
空閑 柚稀
…絶対に夢、叶えろよ。
その言葉を笑顔で。
心から祈るような優しい声で。
…でも、寂しいのかその声は少し震えていた。
倉科 拓哉
……。
空閑 柚稀
ちょっ…!?
柚稀が驚きの声を上げたのは隠れていた私達を見たからじゃない。
倉科君が退部届けを取ったからだった。
空閑 柚稀
いきなり何さ、返してよ。
倉科 拓哉
…無理。
ビリッ!
紙を裂く音。
まさかと思い、ドアから覗くと倉科君が退部届けをビリビリに破いていた。
空閑 柚稀
はぁ!?何やってんの!?
倉科 拓哉
感情で物事言って、不器用で、冷たい態度とって、証拠もないのに周りの意見と時期だけで犯人だとか決めつけてごめん。
空閑 柚稀
……。
倉科 拓哉
今思えば、劇やってる間も俺達の部活のためだけに来てくれてたし、瑞稀さんのお葬式の時、言ってた今週末の予定って都大会のことだろ?大会まで1週間切ってるから部活のために多分、学校まで送ってくれたんだよな?
横目で隣にいた楓を見ると、安心したような表情で少し微笑んでいた。
倉科 拓哉
なぁ、柚稀。
空閑 柚稀
何…。
倉科 拓哉
俺達の夢のために柚稀が誰よりも大好きなバスケを辞めるとか言ってくれてありがとう。でも…辞めないでくれ。俺は夢が叶う瞬間を柚稀に1番近い席で見ていて欲しい。
一息に言われた倉科君の言葉。
その言葉を聞いて、柚稀は…
空閑 柚稀
……ありがと…っ…
そう目から一筋の涙を流して、クラスにいる時とは違う感情のこもった笑顔で笑っていた。
月城 楓
…誕生会は今日でいいな?
燎 颯斗
だね。
月城 楓
龍さんには帰りが遅くなることを伝えておくよ。
燎 颯斗
よろしく。正門で待ってて、2人を連れていくから。
月城 楓
了解。
楓がいなくなり、気付くと琉希もいなかった。
燎 颯斗
そう言えば、弥生ちゃん。どしたの?
三室 弥生
あ、宿題を忘れて…
燎 颯斗
ちょっと待ってね〜……拓哉〜!ちゃんと言えたじゃん!
倉科 拓哉
颯斗!?お前、いたのかよ!?
燎 颯斗
うん、ずっといた。
燎君が教室に入ると、自然に見えるように1番廊下側の私の机から宿題を取ると、自分の背中へ。
燎 颯斗
柚稀、俺もごめん。でも、ありがと!
空閑 柚稀
ううん。部活入ってるのに劇の方にいった私も悪いからさ。
そんな会話をしていると、開いていた窓から後ろ手に燎君が宿題を2人から見えないように差し出す。
三室 弥生
ありがと…!
私はそう小声で言って、宿題を取ると、足音を立てないようにしてその場から立ち去った。