あのあと、有咲は帰宅部から脱出して、バレー部に入部していた。
どうせ、クラスの中で自分のカーストをあげたいの一心で入ったんだろう。
中学時代に経験があったのか前に見た時、2年目のバレー部の練習にもついていけてた。
私の独り言が聞こえた沙月と雪奈が声をかける。
そして、私はあの時の動画を沙月と雪奈に見せた。
『…峰本、ふざけんな!!!!!』
『何がいい情報をありがとだよ!あれは麗美じゃなくて、ウチが日頃から思ってることだし!!バーカ!!!読者モデルとかで調子に乗ってんのはテメーだ!マジでウゼーんだよ!!!』
そう言いながら、沙月の机を蹴り飛ばしている有咲が映っている。
横目で沙月を見ると、眉間にしわがよって、両手を爪が食い込む程握りしめていた。
これはこれは…ガチギレかな?
知らない間に机まで蹴り倒されてるもんねぇ…
心の中でそう笑う。
そうされて当然だ。
元から信用はしてないけど、先に裏切ったのは有咲なんだから、私は悪くない。
そもそも、証拠になるような発言をしたのが問題。
私ならもっと上手くやる。
一応、裏切り者なんだから、制裁を。
机を蹴り倒すだけじゃいけない。
教科書とか体育着をゴミ箱に捨てて、机にも大きな文字で「死ね」って書いてやろう。
別に根暗でも平凡人間って言われてもいい。
ただ…
『てか、何かいじめられっ子的なオーラが半端ないんだよね。』
自分に言いかける。
新村は絶対に許さない、って。
私は笑顔でそう二人に言った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!