雅は正門を出ると、少し遠い駅に向かう。
すると、その駅前の居酒屋に入って行った。
いつ、何が、起きるかが分からないから、スマホのカメラを起動をしたまましてると、電源がだいぶ無くなっていることに気が付いた。
入れていたはずのバッテリーが無かった。
確か、あの時入れようとして…あ、その時、有咲に話しかけられて入れてないかも。
そう言うと、私は来た道を戻った。
すると…バスケットコートがあるちょっとした公園のようなところが騒がしい。
そう言うと、柚稀がコートの端に行くと、そこからシュートを決めた。
そう言い、柚稀が笑う。
その笑顔は学校では見ないいつもとは違う雰囲気をまとった笑顔だった。
すると…
燎君がコートの外で手を振る。
燎君の方に行った柚稀はそのまま2人で移動。
コートには琉依と子供達だけだった。
本当ならどっちも見たいけど…
少し心残りがあったが、私はバッテリーを取りに、学校へと走った。
少しして、居酒屋の前まで戻る。
私を見つけた有咲が近寄ってくる。
居酒屋の向かいにあった喫茶店に2人で入る。
テーブル席に座り、雅が出てこないか居酒屋の入口を見張っていると…
有咲が愚痴るモードに入った…。
そう分かった瞬間、顔は前を見て、テーブルの下でスマホをいじるとボイスレコーダーを起動させて、テーブルの上に画面が見えないようにして置く。
名前を入れることで有咲が沙月のことを言ったことが証明できる。
有咲がお腹を押さえて笑う。だけど、私は…
やんわり否定する言い方にしといた。
沙月が聞いた時に私の愚痴を聞かせないために。
有咲の愚痴に頷くだけで4時間。
10時になり、外は真っ暗、サラリーマンが次々に居酒屋へと入って行く。
私達はそろそろ帰らないとヤバいと、外へ出た。
居酒屋を見ると、雅がお辞儀をしながら出てきた。
私は慌てて何枚も撮影。
既に酔ったサラリーマンを外の風に当てたり、店内で接客をしている雅の姿が写っている。
撮った写真を確認。
ピントも合って、お辞儀をする雅が画面にいる。
撮影した時間も、居酒屋の名前も入っている。
……完璧。
これなら、沙月達に教えれば確実に雅は落ちる。
有咲がそう言って手を振りいなくなる。
私は何枚も撮った写真の中の1枚だけを送ると家へと帰ったのだった…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!