よく分からないまま手を引かれ、昇降口に着く。
2人に初めて下の名前で呼ばれ、私は少し驚いた。
沙月はグループの人以外は苗字の呼び捨て。
雪奈はグループの人や雅以外は苗字に「ちゃん」と付けて呼んでいる。
めぐみと綾には「桃香ちゃん」と言われていたからこの2人が私のことを下の名前で呼んだってことはちゃんとこの1軍派手系に入ることが出来た証拠。
たった少しだけの会話。
これだけでこの1軍派手系の何となくのカーストは知ることが出来た。
トップはもちろん、沙月。2番目は雪奈。
これは4人の日常会話を軽く聞くだけでも分かる。
1番難しかったのはめぐみと綾。
でも、会話を見るに1番低いのは綾のようだ。
先に綾を落とす?
それとも、1軍ヤンキー系かあの有咲か……。
そんなことを考えていると…
考えているうちに話が進んでいたのか、私以外の4人は既にローファーやスニーカーに履き替えて待ってくれていた。
その後、5人でカラオケに行き、夕食を食べた。
その日はそれだけで終わった。
明日からが楽しみでしょうがない。
有咲がどうなるのか、他の1軍ヤンキー系の琉依と柚稀はどうなるのか…考えるだけで面白くなってくる。
そう言えば…明日は体育の授業でまたバスケがあったんだっけ?
翌日、私が異常に1軍派手系と仲良くしているのを見て、他の人達は私が1軍になったことを悟ったようだった。
体育のバスケの時間になり…
39人…?
不登校で紅音と麗美はいないから38人のはず…
怠そうに返事をした琉依。
周りを見た感じだと、琉依のチームが4人編成のチームだと分かった。
でも、琉依と雅、2軍の子が1人しかいない。
前回の汚名返上に燃えるめぐみ。
そんなめぐみを琉依はつまらないものを見るような目で遠目に見ていた。
雪奈が急かそうとする時に琉依が体育館の入口に向かって手招きをした。
そこにいたのはサボり魔の柚稀。
柚稀は上下ジャージで眠そうな表情だ。
いつもいない柚稀がいるから39人ってわけ…。
さっきの疑問の答えが分かったところで試合が開始する。
めぐみは琉依のマークにつき、本気で立ち向かっているのか琉依は溜息をつく。
雅のパスで始まり、柚稀がボールを手にした。
サボり魔で運動をする印象が薄い柚稀には誰も警戒をしていない。
すると、柚稀はそのままコートの真ん中でシュートフォームをつくった。
私はそこで思い出した。
私と有咲、1軍ヤンキー系のチームの時、授業が終わった後に琉依が言いかけた言葉。
『琉依は上手いからな〜』
『でも、柚稀の方が…』
そして、あの雅を尾行した日に見た柚稀。
私は慌てて柚稀のシュートを止めようとブロックをしに行くが、それは遅く…
真っ直ぐに跳んだ柚稀が放ったボールは綺麗な弧を描いて、リングに当たることなくゴールへ入って行った…。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。