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第85話

夜の旅へ
夕凪 沙羅
弥生!早く早く!
三室 弥生
ちょっと待ってよ〜!
はしゃぐ沙羅を追いかけやって来たのは都内のとある演劇ホール。
沙羅がチケットを入口で渡し、チケットと引き換えにパンフレットを受け取る。
三室 弥生
本当に見れるんだ…。
夕凪 沙羅
当たり前じゃ〜ん!
パンフレットには役名と役者名が書かれていた。
そして、演出家の漣さん、主役の悠翔君の写真と顔写真が添えられている。
柚稀……名前だけは載せられてるんだ…。
夕凪 沙羅
ほら、席に行こ!
三室 弥生
うん!
沙羅とホールに向かって歩いていると、劇団員らしき人達が前から何人か歩いてきて、その中には朱璃さんや悠翔君もいた。
夕凪 沙羅
あ、お姉ちゃん!
夕凪 朱璃
おっ、沙羅〜
劇団員
あ、朱璃の妹さんとこの前に来たお友達さんじゃん!見に来たの?
三室 弥生
はい!
漣 悠翔
ぜひ、楽しんでいってください。
劇団員
柚稀も何か言ったらどうだ?
三室 弥生
え?
劇団員
ん?
三室 弥生
何処に柚稀ちゃんがいるんですか?
劇団員
こいつ、こいつ。
そう言い、悠翔君の後ろにいた人を前に押す。
柚稀はカツラを被っているのか、特徴的な長い前髪が無く、いつもなら見えない左目が見えていた。


あの文化祭の劇みたいに普段とは雰囲気が違う。
夕凪 沙羅
え、柚稀ちゃん?全然分からなかったんだけど〜!
三室 弥生
……。
いつも前髪で隠れてる部分に人に見せられないような傷があるとか期待してたのになぁ…
劇団員の言葉に柚稀がキョトンと首を傾げる。
空閑 柚稀
……僕達が夜の旅に案内します。
男声のように低く通った声。
空閑 柚稀
それじゃ、僕は先に戻ってるよ。
微かに微笑みその場から柚稀が去る。
その様子に劇団員は当たり前のように苦笑いを浮かべていた。
劇団員
結局、拗ねても怒ってても漣さんの子は才能があるんだなぁ…
夕凪 朱璃
練習全く来なかったけど、完璧に仕上がってたもんね〜
三室 弥生
そうなんですか?
夕凪 朱璃
うん。悠翔君が引っ張って来ても、漣さんと顔を合わせるとスグに喧嘩勃発で練習にならなかったから…
漣 悠翔
練習サボるし、父さんとの仲は悪すぎだけど……俺は心から姉さんを尊敬してるよ。
珍しくクスッと笑い、悠翔君も柚稀のあとを追いかけるようにいなくなる。
夕凪 朱璃
それじゃ、2人共楽しんでね。
劇団員がいなくなり、私達はホールの座席へ。
既に多くの人が席に座り、その始まりを楽しみに待っている。
三室 弥生
改めて思ったけど、沙羅は朱璃さんと仲良いんだね。
夕凪 沙羅
まぁ、仲悪い人もいるかもだけど、意外と兄弟や姉妹ってそんな感じだよ?
三室 弥生
そっかそっかぁ
夕凪 沙羅
うん!………あ、始まるよ…。
始めを知らす開演ブザーがホールに鳴り響く。
主演の悠翔君…いや、ジョバンニが舞台上に現れて話し出す。
文化祭なんかとは比べ物にならない…
Infinity劇団はやっぱり本物なんだ…!
全ての人が輝いていて、それでも主演が目立つ。
場面が変わり、銀河鉄道に乗ったジョバンニの前に現れたカムパネルラ。
誰が演じるかを公表されなかったカムパネルラ。
ジョバンニとカムパネルラが話し始めると、周りの席からパンフレットを確認する紙の音が沢山聞こえてきた。
男っぽい低い声だけど、優しい声色がカムパネルラの性格を表している。
その時、私には1つの疑問が思い浮かんだ。
どうして、頭も良くて運動も出来て、こんなに才能があるのにあんなに消極的なんだろう…。
パッと見は明るい性格で何事にも積極的なイメージがあるが、実際は違う。
柚稀は常に周りに合わせているだけな気がする。
……まぁ、今はいっか。
Infinity劇団の劇を見れることなんて滅多に無いんだから楽しまないと!
まるで観客も銀河鉄道に乗ってるような気分になれるInfinity劇団の"銀河鉄道の夜"。
このとき、私はこの劇がきっかけで柚稀がテレビで大きく取り上げられることになるなんて知る由もなかった…。