学園祭実行委員会で話し合いが終わったと思うと、早速仕事を与えられた。
当日のチケットを切り分けるって言われ、簡単な仕事だなと思ったが、やってみると大変。
教室で2人だけなのも廊下を通る周りから見られるかもと考えると何だか怖い。
う〜ん…気まずい…。
何か話題、話題…あ!倉科君相手なら1番闇がありそうな柚稀の過去を聞けるかな?
ハサミを動かす手を止めて倉科君を見ると、倉科君は言っていいのかを少し悩んでいるような表情をしていた。
私の記憶の中だと前の高校の間、柚稀が萌え袖以外のときを見た記憶の方が少ない。
そこまでストレスなら倉科君の言う通り、何で女子校に入学したんだろ…
特待生になれるほど頭がいいなら、千代瀬を受けることも出来たはずなのに。
少し笑いながら言うと、倉科君はハッとした表情を浮かべ、「そうだな。」と微かに笑った。
いきなり言われるとは思っていなかったのか、倉科君が頬を少し赤く染める。
私はそう言うと、荷物と切り終わったチケットを持って教室を出たのだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!