と、あなたが差し出したパンフレットに書いてあったのは…
言えない。こんな天使が目の前でこんなにも楽しみにしているというのに。
本当はジェットコースター乗れないなんて言えない。
どうする、どうする涼介。
このバカはこういうことをサラッと言うから、
電車で移動か。
金髪ってだけあって視線がいろんな所から…
「あの人かっこよくない?」
「横の人彼女かな?」
「なにあの人イケメン!」
なんて言う声も聞こえた
そんなことはどうでもいい。
問題はこのバカ。
せっかくの初デートだって言うのに嫉妬してやがる。
ちょっと意地悪してやろうかな
電車をおりてあとは歩くだけ。
嘘。本当は聞こえた。
だから顔が真っ赤になってないか心配。
何こいつ。無言で抱きついてきやがった
なにこの可愛いバカは
着いてしまった。俺の大嫌いなものが詰まったエリア。
このバカはほんとに元気すぎる。
でもそこが愛おしい
と言ってきて、見てみると
「スチールドラゴン」
そう、これは俺が昔唯一乗ったことのあるやつ。
叫んだな。お母さんって。
でも断る訳にはいかないから
あなた、隣で叫んだらごめんな
もう乗る時が…
『たすけて!ケケケ!!!!』
俺は心の中でそう叫んだ。
そう俺は黙るという手段を使った
そんな俺に比べてこの隣にいるバカは
ずっと叫んでやがる
俺がこの時目を離さなかったら…
あんなことにはならなかったのかも。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!