第20話

幼馴染み
220
2018/06/14 16:53
部活帰り、いつものように薄暗い夜道を一人で歩く。今日も、この前のグランプリのことで、少し遅くなってしまった。槊は、もうとっくに帰ったかな。
菜柚
はぁ・・・
大きく溜め息をつく。今日は、忙しすぎて、新堂くんと会うことはなかったけど、槊ともあまり会えなかった。
夜遅いのに、何してたんだよ
振り向くと、そこに槊がいた。
菜柚
槊は帰り早かったの?
ああ、ミーティングだけだったからな
菜柚
そっか・・・
菜柚こそ、どうしてこんなに遅いんだよ
菜柚
ちょっと、グランプリのことで長引いちゃって
あー、もうすぐだもんな
頑張れよ
菜柚
うんもちろん!槊も応援しに来てよね!
え、俺が?
槊が、めちゃくちゃ面倒くさそうな顔をした。
菜柚
そんなに嫌?
だって、男なんかほとんどいないだろ
あ・・・そうか、確か審査員の漫画家さんも、全員女の人で、投稿者も女子がほとんどだから、応援に来る人だって、女子ばかりに決まっている。そんなことを全然考えていなかった私は、本当にいつもまわりに頼ってばかりだと自覚する。
菜柚
ごめん・・・無理にとは言わないけど・・・来てくれたら嬉しい
・・・っ!
槊の頬が真っ赤に染まった。
菜柚
槊⁉大丈夫⁉
・・・行くから
菜柚
え?
グランプリ見に行く
菜柚
本当⁉
私は、思わず槊の手を握ってしまった。
菜柚
ご、ごめん!
はぁ、もう少しデリカシーを身につけろ
菜柚
はい・・・すみません
前にも言われてしまったことを、また言われてしまった。
・・・お前さ、手小さいな
槊が自分の手を見ながらそう言った。
菜柚
は⁉槊がでかいんでしょ!
・・・そうか
あれ、いつもならここで喧嘩になるのに、槊どうしたのかな・・・。
菜柚
・・・槊、何かあった?
え?
菜柚
なんか元気ないみたいだから、気になって
・・・お前が俺の顔色伺うなんて、珍しいな
菜柚
は⁉それどういう意味⁉
・・・本当、もうそういうのやめよ
菜柚
・・・え?
いつまでも、子供みたいに喧嘩して、幼馴染みするのはやめよって言ってんの
菜柚
は?
だから・・・もう幼馴染みやめよ
俺達の関係がなくなったら、お前だって好きに恋とか出来るだろ
・・・もしかして、今日あの髪型にしたから、勘違いしてる・・・?そういう意味じゃないのに・・・。
菜柚
嫌だ!
菜柚?
菜柚
私は子供だろうが何でもいい!槊と話せなくなる方が絶対嫌だ!
は・・・?
菜柚
二人の時くらい子供になってもいいじゃん!大人にだって、そういう逃げ道は必要だし、それでまわりに言われても、気にする方が大人げないよ!私達のことなんだから、まわりの意見は関係ないでしょ!
・・・まさかそれをお前に言われるとはな
菜柚
私だって、この前「今でも仲のいい幼馴染みなんて珍しい」って言われた。でも、そんなの全然気にしなかったし、幼馴染みとの付き合いなんて、人それぞれだよ。
そうだよな、気にしてた俺がバカだった。今回は感謝するよ。
槊の言葉は、いつもぶっきらぼうで、厳しいけど、優しい。
菜柚
感謝されて当然!
素直じゃない私も、素直に『好き』って言いたい。目の前の好きな人に。

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