部活帰り、いつものように薄暗い夜道を一人で歩く。今日も、この前のグランプリのことで、少し遅くなってしまった。槊は、もうとっくに帰ったかな。
大きく溜め息をつく。今日は、忙しすぎて、新堂くんと会うことはなかったけど、槊ともあまり会えなかった。
振り向くと、そこに槊がいた。
槊が、めちゃくちゃ面倒くさそうな顔をした。
あ・・・そうか、確か審査員の漫画家さんも、全員女の人で、投稿者も女子がほとんどだから、応援に来る人だって、女子ばかりに決まっている。そんなことを全然考えていなかった私は、本当にいつもまわりに頼ってばかりだと自覚する。
槊の頬が真っ赤に染まった。
私は、思わず槊の手を握ってしまった。
前にも言われてしまったことを、また言われてしまった。
槊が自分の手を見ながらそう言った。
あれ、いつもならここで喧嘩になるのに、槊どうしたのかな・・・。
・・・もしかして、今日あの髪型にしたから、勘違いしてる・・・?そういう意味じゃないのに・・・。
槊の言葉は、いつもぶっきらぼうで、厳しいけど、優しい。
素直じゃない私も、素直に『好き』って言いたい。目の前の好きな人に。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。