あの日から1か月、私と槊は付き合っている。そして、もうすぐ槊の誕生日だ。誕生日デートの約束もしている。・・・だが、私にとって最大の困難がある。それは・・・誕生日プレゼントが決まらない!いつもは槊の大好きな歌手のファン限定のクリアファイルやタオルなどを渡していたけど、もう少し豪華にしたい。例えば・・・思い付かない。遥香に相談したら、「自分で考えないと、意味がない」と言われてしまった。ごもっともだけど、やっぱり思い付かない。そのせいで、ここ数日疲労に追われている。もっと分かりやすい趣味ならいいのに。
張本人にまで心配されてしまった。あ、そうだ!男子の趣味が分からないなら、身近の男子に聞けばいい。よし、嫌がられると思うけど、柚登に聞いてみよう!
ガチャッ。
部屋のドアが開いた。ドアの方を見ると・・・
槊がいた。
半ば呆れたように、槊が言った。
そう言って、槊は私の部屋へと私を引きずっていった。
バタンッ。
ドアを閉めた。
槊は、曖昧に答えた後、私を抱き締めた。
抱き締めたまま、そう答える。そして、槊の顔が私の顔に近付いていって・・・
あ、え、それじゃ結婚したいって言ってるのと、誤解された・・・⁉
そう言って、再び顔を近づけた。
そう言って、私から離れた。
そう言って、槊は私から離れた。
案外そっけないな。
私は、自分の心が少し落ち込んでいるのを、必死に抑えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!