槊に告白されて、だいぶ経った今、ようやく自分の気持ちに気がついた。私は、槊のことが好き。意地悪で、厳しくて、ぶっきらぼうだけど、時には優しくて、頼りになる。そんな槊が好きなんだ。そして、私は決意した。今日、槊に告白する。いつまでも、自分のネガティブ思考に負けているようじゃ、何も始まらない。
朝、いつもより早く起きた。今日は、休日だけど、グランプリがあるので、制服を着た。応援に来てくれるのは、家族と、遥香と麗ちゃん、そして、槊だ。
本当に来てくれた。それだけで嬉しかった。
もうすぐ始まる時間なので、私は参加者の席の方へ向かい、みんなは観覧席の方へと向かった。
会場には、約20名ほどの漫画家さんと、80人ほどの参加者と、200人ほどの応援者が集まっていた。審査員の漫画家さんは、落ち着いた表情で、今緊張がピークの参加者達と向かい合っている。
いよいよ審査が始まる。
私は予選2位だ。前回の予選では、金賞がいなくて、銀賞が1位だった。
つまり、先輩から見た順位になるということだ。私は、やれるだけのことはやった。1位になる自信というのはあまりないけど、それなりの賞は取りたい。
今から順番に漫画家さんが採点をしていく。私は5番目だ。
いよいよ私の漫画の採点だ。漫画家さん達は、どのように見てくれているかな。
2時間ほど経って、すべての参加者の漫画の採点が終了した。
合計80人中8人が選ばれることになる。
予選2位だったからには、ここより上は取りたい。
なんと、ここで予選3位の人が出てしまった。
いよいよここからだ。出来れば、銀賞より上を取りたい。
ここで、予選1位の人も出てしまった。
私はまだ言われていない。
もう私は絶望した。呼ばれない確信がした。
信じられなかった。まさか、優勝出来るとは思っていなかった。
司会者さんからトロフィーを受け取った。
観覧席に向かうと、遥香達が来てくれた。
麗ちゃんも何か言ってやってよ!
冬田ねね先生は、私が大好きな漫画「つばさのホタル」を描いていた先生だ。
(「冬田ねね」は、春田なな先生のパクリみたいな感じで、「つばさのホタル」ではなく、「つばさとホタル」です。勝手に引用してすみません。作者)
そう言って、冬田ねね先生は歩いて行った。
そして、二人と別れた後、槊と二人で帰った。柚登はこの後デートで、両親は、先に帰ったのだ。
今って、告白のチャンスなのかな。
槊の表情が少し曇った気がした。言わないと。
そう言った瞬間、槊が目を大きく見開いた。
もう遅かった?槊は、もう他の子のこと好きになっちゃった?
そんなに長い間、私のこと・・・
それって・・・
そう言ったら、涙が溢れてきた。嬉しい。頑張って良かった。
槊はそう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。今日は、生きてきた中で一番幸せな日になったかもしれない。
《終》
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!