昨日、本当は槊のことを好きなんじゃないか、と思ってしまったせいで、全然眠れなかった。しかも、こんな時に限って朝練まである。
全然休めていない、重い体を起こし、一階へと向かった。
朝食を食べて、家を出た。これでも朝早いのに、柚登はもっと早い。
私の学校の美術部は、文化部にしては珍しく、朝練がある。(まあ、締め切り間近で終わっていない人のみだけど)
ガラッ。
学校に着き、美術室の戸を開けた。
楓ちゃんは、いつもなら朝練に来るほど残っていなかった。
後輩を励ますのも、先輩の役目だ。私はいつも、スランプ中の後輩を励ましてきた。
実は、3年生が二人しかいないため、私は副部長だった。
よし。今から頑張って終わらせよう!そうしたら、至福のディナーが待っている。
全員が黙々と作業を行っている。私は漫画の原稿だけど、みんなは水彩画だったり、デッサンだったり、グラデーションだったりをしていて、やっていることは、人それぞれだ。
私と同じ3年生の部員の子の作品が、完成したようだ。
見せられたスケッチブックには、川の背景の水彩画が描かれていた。
ガラッ。
顧問の先生が美術室に入って来た。
褒めて貰ったからには頑張らないと!
・・・・・
再び沈黙が訪れた。
ほぼ同時に言ってしまった。二人で顔を見合わせて、笑った。
とりあえず、終わって良かった~!
やっぱり、褒めてくれたり、楽しんで読んでくれる人がいるから、頑張れる。そして、達成感を感じる。これは最高だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。