ある日、私はいつものように、菜柚と一緒に休み時間を満喫していた。
…なんだよ、前川の奴。私の菜柚を奪いやがって。
…って、そうじゃなくて、私を置いて菜柚を連れてくってどういうこと?
前川、あんたまさか私の菜柚に惚れちゃった?
ダメだよ、前川なんかに菜柚は渡さない。
てか、神尾くんが渡すわけないでしょ…。
ほどなくして、菜柚が戻って来た。
バレバレ。そんなんで隠してないとか笑えるから。
って違う!私はこれが言いたかったんじゃない!
最期まで言い切って、二人を見ると、菜柚はポカンとした顔になっていた。
意味が分かったらしい前川は、なぜか笑い出した。
必殺!上目遣い!
そう言って、前川は私を抱き締めた。
私は、ふにゃ、と、はにかんで笑った。
まあ、正直に言うと、汗臭かった。
でも、夏だからあんまりいらないけど、人の温もりを感じた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!