第2話

クラス
463
2018/06/06 22:07
教室に入って行くと、既に10人ほどの人が来ていた。
菜柚
ねぇ遥香、知ってる人全然いないんだけど・・・
遥香
私も。でもまあまだ半分も来てないし全員で見たらもうちょっといるっしょ。
菜柚
だよね、大丈夫だよね!
遥香
うん、なんにしろ菜柚は心配し過ぎなんだよ。
うっ。ですよね。
遥香はいつも、私の痛い所をついてくるけど、それも的確なアドバイスをするためなんだよね。
遥香
ガチガチに固まってたら、誰も声かけてくんないよ?
菜柚
そうだよね、私頑張る!
遥香
頑張るのはいいけど、ひたすら声かけられるのを待つのはダメだよ。
菜柚
え?
遥香
菜柚去年もそれで、私が見逃してたら友達いなかったでしょ。
うっ。そうでした。
遥香と仲良くなりすぎて、忘れかけてました・・・。
遥香
ほんっと、そういうことはすぐ忘れるんだから。まあそれが役に立つ時もあるけどね。
菜柚
そうなの?
遥香
『彼氏に振られた』とか、ずっと覚えていたくないこともあるし。
な、なるほど。
彼氏がいたことのない菜柚にとってはその例えは少し難しかったが、何とか理解できた。

そんなつまらない話をしていると(原因はほぼ私)、あっという間にチャイムが鳴った。

ガラッ。
先生が教室に入って来る。
先生
おはようございます。今年一年間このクラスの担任の、山中です。よろしく。
そう言った先生は、30代前半くらいの年齢の、男の人だった。


休み時間、一人の女子が、遥香に声をかけていた。
ねぇ、遥香ちゃん、だよね?私辻本麗、1年の時に同じクラスだったんだけど!
遥香
え?あ、あーー!思い出した!麗!久しぶり~!
菜柚
・・・は、遥香、知り合い?
普段のオドオドした口調が出てしまった。
遥香
あーうん。1年の時同じクラスだった子。
辻本麗です。よろしくね~♪
菜柚
よ、よろしくね。えと、早瀬菜柚です。
菜柚ちゃんか!いい名前だね~!
菜柚
え、あ、ありがとう・・・!
辻本麗ちゃん。人懐っこくて、可愛らしい、いかにも女子って感じの子。私とは正反対だ。
遥香
もう菜柚。ひびってないで、ちゃんと喋んないと。
菜柚
うっ。ごめん。
遥香
ん~、あ、そうだ!麗ちゃん、この子の描いた絵見る?超上手いんだよね~
菜柚
え、ちょ、遥香・・・
そんなに上手いの?
遥香
うん。漫画家レベル。
多分遥香は、自己紹介から話をそらして、私の良い所を教えようと思ったんだろう。
見せて~!
遥香
はいコレ。
そう言って、遥香は自分のスマホの、私の描いた絵を撮った写真を見せた。
え、何これ・・・。めちゃくちゃ上手いじゃん!
菜柚
そ、そうかな?
そういえば、私と遥香の始まりも、私の絵を見た時だった。
1年前のこの日、やっぱり私は友達が出来なくて、悩んでいた。
バサッ。
ノートを落としてしまった。慌てて拾おうとしまら・・・
遥香
大丈夫?
遥香が私のノートを拾ってくれた。
菜柚
あ、うん。ごめん。
すると、遥香が拾ったノートを見始めた。
菜柚
え、ちょ、何・・・?
遥香
あのさ、めちゃくちゃ上手くない⁉
菜柚
え⁉
遥香
私達さ、友達にならない?
菜柚
・・・!うん!



・・・長々と過去を思い出していたら、いつの間にか朝礼が始まる時間だった。
遥香
もうこんな時間だ
席つこうか
うん。菜柚ちゃん、さっきの話考えといてね~!
菜柚
あ、え、な・・・
さっきの話って何だろう。
菜柚
ねぇ遥香、さっきの話って何だと思う?
遥香
えっ、菜柚話聞いてなかったの?
麗が菜柚と友達になりたいって言ってたじゃん
菜柚
え、そ、そうなの?
全然聞いてなかったみたいだ。
麗ちゃんごめんなさい・・・。
遥香
菜柚、話は最初から最後までちゃんと聞かないとダメだよ
菜柚
うっ。ごめん・・・
遥香
まあいいけど、ちゃんと考えといてあげなよ
菜柚
う、うん
答えはもう決まってる。友達になりたいって言われたのに、断る意味がない。ただでさえ友達が少ないのに、ここで断ったらもう絶対誰とも友達になれない。後で、ちゃんとお願いしよう。

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