教室に入って行くと、既に10人ほどの人が来ていた。
うっ。ですよね。
遥香はいつも、私の痛い所をついてくるけど、それも的確なアドバイスをするためなんだよね。
うっ。そうでした。
遥香と仲良くなりすぎて、忘れかけてました・・・。
な、なるほど。
彼氏がいたことのない菜柚にとってはその例えは少し難しかったが、何とか理解できた。
そんなつまらない話をしていると(原因はほぼ私)、あっという間にチャイムが鳴った。
ガラッ。
先生が教室に入って来る。
そう言った先生は、30代前半くらいの年齢の、男の人だった。
休み時間、一人の女子が、遥香に声をかけていた。
普段のオドオドした口調が出てしまった。
辻本麗ちゃん。人懐っこくて、可愛らしい、いかにも女子って感じの子。私とは正反対だ。
多分遥香は、自己紹介から話をそらして、私の良い所を教えようと思ったんだろう。
そう言って、遥香は自分のスマホの、私の描いた絵を撮った写真を見せた。
そういえば、私と遥香の始まりも、私の絵を見た時だった。
1年前のこの日、やっぱり私は友達が出来なくて、悩んでいた。
バサッ。
ノートを落としてしまった。慌てて拾おうとしまら・・・
遥香が私のノートを拾ってくれた。
すると、遥香が拾ったノートを見始めた。
・・・長々と過去を思い出していたら、いつの間にか朝礼が始まる時間だった。
さっきの話って何だろう。
全然聞いてなかったみたいだ。
麗ちゃんごめんなさい・・・。
答えはもう決まってる。友達になりたいって言われたのに、断る意味がない。ただでさえ友達が少ないのに、ここで断ったらもう絶対誰とも友達になれない。後で、ちゃんとお願いしよう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!