俺らを見て、びっくりしとるのんちゃん。
手には何やらいっぱいの荷物。
あなたに会いたくて来たのに、俺らいてびっくりやったんろうな。
…ってか、のんちゃんってあなたん家来たことあんの?
あなたは何もそんなこと言っとらんかったけど。
のんちゃんの持ってきた袋の中には人気のお店のスムージーや、
有名店の焼き菓子、お洒落なお惣菜とかが入ってて、
あなたに食べさせたくて、色々考えてんだろうなぁ…って見ただけでわかる。
スムージーを持って、部屋の中にいるあなたに声をかける。
あなたが小さな声でそう呟いてんのが聞こえる。
ホンマにうちの姫さんは…。
ようやくあなたがしぶしぶ出てくる。
俺にはそんな態度なのに、
なんて笑顔で言っとるから、ちょっと腹立つねん。
まぁ、俺には心許してくれてるって思いたいねんけどな。
なんかのんちゃんの目が怖いんやけど。
…手がかかる妹の面倒みてるだけって、
おかんキャラ貫いてみるけど、めっちゃ機嫌悪そうやん。
濵ちゃんはあなたがカレーを食べるんを見届けたら、早々に帰ってった。
あの人もいそがしいのになぁ。
残ったカレーは1食分だけ残して、残りは冷凍して…
って、色々片付けてるうちに、あなたはまた部屋にこもってまうし。
のんちゃんが、ちょっと可哀相やん。
もうちょっといようかと思ってたやけど、先に帰って、少しくらい2人にさせてやろうかな。
帰り支度してたら、あなたが出てきたから、
って、玄関から声をかけたら、あなたがこっちまでやってきた。
のんちゃんに聞こえへんように、小さな声であなたが言う。
ここに来はじめた頃は、めっちゃ遠慮してたんやけど、
次第に慣れてきたんか、行く日の前には食べたいものをリクエストするくらいになってた。
…餌付け作戦、成功ってとこかな。
…またね
たった一言が何よりも嬉しい。
今度来る時は何作ったろう。
そんなことを考えながら、俺は仕事に向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!