~あなた‘s side~
あれから何とか家に帰ってきて、
何もする気が起きなくて、ただリビングのソファに座ってた。
何だろ、時々こんな風に心が大きな落とし穴に落ちることがあって。
最近はなかったんだけど、今回はひどすぎた。
毎日が楽しかったから、余計になんだろうけど。
今日は1日撮影を見学するつもりで予定はあげてたから、
急ぎの仕事もないし
このまま寝ちゃおうかな。
そんなことを思ってたら、
家のチャイムが鳴った。
…出たくないな。
居留守使おうかな…なんて思って、何度も鳴るチャイムを無視していたら、
ドアをたたく音とのんちゃんの声。
…何でのんちゃんが?
慌ててドアを開ける。
そこにはほっとした顔をしてるのんちゃんがいた。
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家にあがり、ソファに座ったのんちゃんが切り出す。
ホントに何もないもん。
のんちゃんの優しい声と、優しい眼差しに
凝り固まった心がほどけてく気がした。
途切れ途切れの私の話を、のんちゃんは黙って聞いていた。
また涙がこぼれそうなのを我慢して俯いてたら
見上げると、のんちゃんは優しく微笑んでいて
のんちゃんの言葉は優しくて、力強くて、心に染み込んでいく。
ぐちゃぐちゃになってた心が少しずつ流れ出してくのを感じてた。
泣きそうなのを必死に我慢する。
のんちゃんはソファの下に胡座を書いて座って
自分の横をポンポンとたたく。
言われるがままに座ると、のんちゃんは私の頭を自分の胸元に引き寄せた。
そりゃ、顔は見えないかもしれないけど…
ちょっと困ってたら、
のんちゃんの声が優しくて、抑えてた涙がこぼれた。
その間、のんちゃんはずっと子どもをあやすみたいに、背中をトントン叩いてて、
温もりが優しくて
小さな子どもみたいに大声をあげて泣きじゃくってた。
私、ここにいてもいいんだ。
そんな安心感は心のつかえを取り除いていった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。