第50話

クランクイン 3 ~淳太‘s side~
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2021/06/09 03:29
全員が集まるファーストシーンを撮り終わって戻ったら、あなたが泣いてるのが見えて、
淳太
あなたちゃん、どうした?

慌てて駆け寄っていた。


幸い、他のメンバーはまだ別のシーンがあって、気づいてないみたいや。

あなた
ごめんなさい。何か感動して…

確かにそうなのかもしれないけど、



その涙には違和感があった。


淳太
ほな、何でそんな悲しそうに泣くんや?

感動して泣いてるんやったら、そんな悲しそうな顔するわけないやろ。



今すぐ抱きしめたくなるくらい、苦しそうに泣くことないやろ。


淳太
何でか、俺にも言えんの?

苦しい何かを抱えてるんやったら、頼って欲しいのに。


俺じゃあかんのかな。



伝えたい言葉はたくさんあるのに、口に出せへんでいた。


あなた
ごめん。私帰るね。みんなには具合悪いって、言っておいて
淳太
待ってや

このまま1人で帰せるわけなくて



何とか引き留めたくて


とっさにあなたの手首を捕まえてた。
淳太
俺、後1シーンで今日の撮りは終わりだから
淳太
送ってくから、待ってて


必死やった。


このまま1人で帰せるわけないやん。



でも、あなたちゃんは
あなた
ごめんなさい。

そうつぶやくと、俺の手を外して出ていってしまった。


俺は小さくなる後ろ姿を見送ることしか、できんかった。


シゲ
あれ~っ、あなた帰ったん?
照史
ホンマに?
撮影を終えたメンバーが戻ってくる。
淳太
何か調子悪かったらしいわ。
崇裕
大丈夫なんかな。
心配やな~。

俺はスタジオの角に神ちゃんを連れ出した。


智洋
なんやの、急に。
淳太
神ちゃん、この間、あなたちゃんになんかしたん?
智洋
なんもせんって、淳太に釘さされとるし
智洋
って、何かあったん?
淳太
いや、何か様子おかしかったんや
智洋
あなた? 何で?
淳太
それが分からんから、聞いとるんや

って、神ちゃん責めてもお門違いなのは分かってるんやけどな。




照史
何かあったん?
俺が考え込んどるの見て、照史が声をかけてくれる。


淳太
あんな、実はあなたちゃん、泣いてたんや。
照史
泣いてたん?
淳太
そや。本人は俺らの演技見て感動して、って言ってたけど、
照史
そうやない、って淳太は思っとるんやろ。
淳太
まぁな。
照史
あの子、ちょっと抱え込むとこあるからなぁ。

俺じゃ支えてあげられんのかな。



あの辛そうな泣き顔が頭から離れんくて。



どうしたら、いつもみたいに笑ってくれる?


ただそれだけを考えてた。


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