第13話

その夜 ~シゲ‘s side~
1,111
2021/05/26 14:24

~シゲ‘s side~




…うわ~っ、先こされたやんか。


俺が一番最初にあなたとメシ行くはずやったのに。






何だか悔しくて、仕事帰りの車の中で、俺はあなたに電話してみた。



あなた
はい。

コールを鳴らすと、あなたはすぐ出てくれた。

シゲ
あなた、今日はお疲れさんやったな。
あなた
あっ、シゲちゃん。お仕事終わったの?


あなたの声が耳元で優しく響く。


シゲ
仕事してたん?
あなた
うん、今日の資料まとめてた。


声に混ざって、キーボードをたたく音がする。
シゲ
電話、邪魔やったん?
あなた
ううん、いつも1人だから、誰かと話ながらするのも楽しいよ。
シゲ
どうせなら、誰かやなくて、シゲちゃんと…がええなぁ。
あなた
ふふっ、そうだね。
シゲ
昼間としゃべり方変わったやんな。



最初会った時よりも親しく感じる。


あなた
さっきは緊張してたもん。
あなた
今は顔見えない分、ちょっと気楽だし。
シゲ
見えん方がええの?
あなた
イケメン目の前にしたら、緊張するわ。


…やっぱいいなぁ、この子。



出会った時の俺の勘は当たってるんやと思う。


シゲ
そうや、明日、照史と淳太とメシ行くんやって?
あなた
スタジオ見学に行く話聞いたの?
シゲ
スタジオ見学?
あなた
うん、明日『ヒルナンデス』のスタジオ見学させてくれるんだって。


…明日、木曜日やん。


あなた
桐山さんが、勉強になるんじゃないって誘ってくれたの。
シゲ
プライベートやないんだ。
あなた
お仕事だよ。終わったら、ご飯くらいするかもしれないけど。


あいつら、そんなこと全然言ってなかったやん。



焦って損したわ。




今度会ったらしばいたろ。

シゲ
なぁ、今度俺とも一緒にメシ食いに行ってくれる?
あなた
いいけど、シゲちゃん忙しいんじゃないの?


…主演ドラマ始まるしなぁ。


シゲ
頑張って時間作るわ。
あなた
でも、無理しないでね。
シゲ
わかった。
シゲ
なぁ、また電話してもええ?
あなた
うん、待ってるね。
シゲ
仕事、頑張ってな。
あなた
ありがとう、おやすみ。


もっと話してたいけど、仕事の邪魔したくないねんな。



…俺、本気になりそうや。



そんな予感を感じながら、空の月を眺めていた。


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